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戦力外通告になった野球選手の妻

 この5年くらい、やたらと戦力外通告になった野球選手のドキュメンタリーを見かけるようになったが、大雑把に平均化してしまうと、解雇になった夫を妻がどう励ますかを下地にしたものが多い。2つの定義で揺れる。1:男は女・子どもを困らせてはいけない。2:だけども、男には夢がある。この古臭い葛藤を正攻法で稼動できるから、需要が生まれるのだろう。

 妻が栄養バランスを考えた食事を作ってもいいし、作らなくてもいいと思うのだが、なにかこう、スポーツ選手の妻は、栄養バランスを考えた食事を作らなくてはいけないと強いてくる気配が漂う。おい、物知らずめ、そういう妻に支えられてはじめてスポーツ選手は満足なプレイができるんだよ、とこちらの無知を指摘されそうだが、ならば、瓶ビールを逆さまにして、やって来た女子アナをびしょ濡れにさせるビールかけを嬉々と見せつけてくるマチズモは止めたほうが宜しいのではと思う。

ノーベル物理学賞獲っちゃう夫は、めっけもん

 「内助の功」に急ぐのと、「普段は普通の女の子」の常用は、この国のメディアがひとまず男を主語にできていることを再確認させてくれる。意外な職業に美人を見つけて、「美人すぎる○○」と謳う働きかけも止まらない。「コートを出れば普通の女の子」とアスリートのプライベートを追うパターンも相変わらず多い。

 天野教授の話に戻る。「家事をいっさい引き受けてくれて、いってらっしゃい、って気持ちよく送り出してくれて、しかもですよ、ノーベル物理学賞獲っちゃう夫っていうのは、これはめっけもんでしたね、奥様!」と問うと、スタジオは笑いにつつまれた。奥様は軽く笑みを浮かべる程度で「そうですね」と答える。カッコいい。

 その問いかけをしたキャスターは女性。今の政府の女性閣僚もそうだけれど、女性にとって、臨機応変な同性の味方がメディアの中に少ないのかも。相変わらず決まりきった色で男と女を輝かせようとしてくる。ものすんごい単色の発光。青色を加えたら、変幻自在に光るって聞いたのだけれど。