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(この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年10月21日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

内助の功ハンティング

 青色LEDの開発に成功した日本の科学者3名がノーベル物理学賞を受賞すると、テレビ局各社はカメラを背負って「内助の功ハンティング」に出かけた。皆、支えてきた妻が好きである。実際に個々の夫婦がどうであろうと勿論構わないが、テレビが遮二無二「支える妻」を求めてしまう働きかけって、長年正しいものとして蓄積してきた。それって結果的に、女性が活躍しにくい社会とも少なからずリンクしてくる。

 その点、受賞者の1人である名古屋大学・天野浩教授の奥様の聡明さが光った。内助の功ハンターが求める奥様像に決して押し切られなかった。宣戦布告のように「内助の功なんてしていませんよ」とキッパリ。スタジオのキャスターは「そんなぁ、それは謙遜ですよね?」と問うと、「私は何もしておりません。夫や研究所の皆さんの努力の賜物です」と表情を変えずに再びキャスターへ差し戻した。

「夫のおかげでロシアに来られた」と捏造

 天野教授の奥様は、日本を離れてロシアで日本語を教えている。それをたいそうイレギュラーなことのようにキャスターが「離ればなれになる選択について、ダンナさんはなんとおっしゃっていたのですかぁ?」と聞くと、奥様は、「『あっ、そう、じゃあ行ってらっしゃい』だけですね」とサラリ。

 その前後に流れたテロップ。
 「夫のおかげでロシアに来られた」

 奥様はそんなことは一言も言っていない。むしろ、その手のフォーマット的夫婦像におさまらないよう、発言に気を配っていたはずだが、事前に用意していたであろうテロップを挟み込んでしまう。