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「1つ上の視点」を取りに行け

 担当部署を任されている役員、部長、課長は、会社から下りてくるミッションを待っているだけでは、十分に機能しているとは言えない。それぞれが担当部署のリーダーとして、どうありたいかを積極的に考えていけると、さらに組織は強くなれる。

 それは何も会社のためだけではない。自分の成長にとっても大切なのだ。

 課長や部長、役員に昇進させる際の会社や上司の判断規準は何だろう。恐らく「上の役職に期待されるミッションが遂行できる、十分なマネジメントが期待できる」と思えることだ。

 現状の役職の枠に収まっているのでは「上の役職に期待されるミッションが遂行できる、十分なマネジメントが期待できる」とは判断されないだろう。会社や上司にそのように判断してもらうためには、「1つ上の視点」で考え、行動する姿が求められる。

 少なくとも、役員が部長の、部長が課長の、課長がメンバーの仕事をしている場合ではない。自身と会社が成長するために欠かせないのは、むしろ「1つ上の視点」なのだ。

 現在役職の人たちだけの話ではない。メンバーも「1つ上の視点」を取りに行くことで、自らも成長し、会社も成長できる。自分の名刺の名前の上に1つ上の役職名が書かれていたら、どう発想するだろうか。

 例えばメンバーとして課のミッションに対して、自分ならこう取り組んでみたい(=課長の視点で)と提案してみてもいい。課長なら部のミッションに対して、「私の課としてはこのように貢献したい」と提案してもいいだろう。

 時期尚早などと却下されても、考えたことは無駄にはならない。次回以降の提案のきっかけにもなり、高い視点は未来のなりたい自分に近づけるはずだ。

 トヨタ自動車には、「2つ上の視点で発想しろ」という言葉がある。工場のメンバーは、1つ上の主任や課長、2つ上の課長や工場長の視点で現場を見ろという意味だ。目線を挙げることで、メンバーの視点では見えなかったものが見えてくる。

 気づいた点を提案し、実行していくことで本人は会社から高いレベルと認められ、会社もさらに成長できる。同社にはそれをミッションとするだけでなく、権限と評価も用意される。

 上司が部下の仕事をして満足している会社と、上司が1つ、2つ上の視点を意識して動いている会社では、ものすごく大きな差が生まれる。本人にとっての成長感も前者と後者ではずいぶんと異なるだろう。

 会社として目指す目的や価値観を示すのは、トップの仕事だ。だがそれを実現するべく仕事を取りに行くことは、本人の意志さえあれば役職は関係なく誰にでもできる。それをよしとして推進している会社、各メンバーが「1つ上の視点」で考えている会社は、競争の激しい時代にあっても成長し続けていくに違いない。

 トップ、役職者、メンバー1人ひとりの視点の高さが、会社の未来を決めることになる。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2011年9月26日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)