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 本稿では、米ビジネススクールで助教授を務める筆者が、海外の経営学の知見を紹介していきます。

 さて、私は2012年『世界の経営学者はいま何を考えているのか(以下、「世界の〜」)』という本を刊行したのですが、そこで予想外に反響があったのが「リソース・ベースト・ビュー(RBV)論争」についての章でした。

 経営学には、RBVという有名な理論があります。 米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が発展させた理論に次いでよく知られており、MBAの経営戦略論の教科書では間違いなく取り上げられる考えです。

 しかし実は「RBVは経営理論としての体をなしていない」という批判もあるのです。特に話題をよんだのが、2001年に米テキサス大学のリチャード・プリム教授と香港理工大学のジョン・バトラー教授が、現在米ユタ大学のスター教授であるジェイ・バーニー教授と『アカデミー・オブ・マネジメント・レビュー(AMR)』で対決した論争です。この論争でプリム教授とバトラー教授は、バーニーが1991年に発表した有名なRBVの論文を、複数の角度から批判しました。

 この論争で3人がもっとも意見を戦わせた点については、ぜひ拙著を読んで下さい。ここでは、その時のもう1つの論点で、そしてビジネスパーソンのみなさんにも示唆の大きい議論を紹介しましょう。

「価値のあるリソース」は何で決まるのか

 RBVとは企業の経営資源(リソース)に着目する理論です。 企業は製品・サービスを生み出すために、さまざまなリソースを持っています。たとえば人材や技術がそうですし、ブランドも重要なリソースです。1991年に発表した論文の中で、バーニー教授は企業リソースについて以下のような命題をたてました。

「命題:企業の経営資源に価値があり、希少なとき、その企業は競争優位を獲得できる」

 ここでいう「競争優位」とは、企業が長い間その業界で「勝ち続けられる能力」だと考えて下さい。「企業が優れた人材・技術など、価値があってしかも競合他社が持っていないようなリソースを持っていれば、その業界で長く勝ち続けられる」というわけです。

 有名なポーター教授の理論は、差別化戦略・低価格化戦略など「製品・サービス側」の議論をしています。いわば「表側」です。それに対してバーニー教授は、「裏側」の企業リソースもまた競争優位の源泉なのだ、と主張したのです。