そのバーニーが2007年に、米テキサス大学ダラス校のスーヒョン・リーおよびマイク・ペンと共同で、経営理論のトップ学術誌「アカデミー・オブ・マネジメント・レビュー」誌に、リアル・オプションの論文を発表しました。この論文でバーニーたちは、リアル・オプションの考えを応用して、「『失敗事業のたたみやすさ』の違いが、世界各国の起業の活性化の違いに影響しているのではないか」と主張したのです。

 言うまでもなく、起業は不確実性の高いものです。新しくできた会社の多くは数年内に消えてしまいます。特に将来的に上場を目指すような分野(今ならIT、バイオ産業など)では、技術革新のスピードや市場の変化も早く、結果、上場までたどりつける会社はごくわずかです。起業家の多くはそのような不確実性を知りつつも、あえてリスクをとられている方が多いはずです。

 しかし、もしなんらかの理由で「失敗しても事業をきれいにたためる」なら、すなわち「会社を潰す際のコストが比較的小さくて済む」ならどうでしょうか。

 例えば、仮に会社が倒産しても経営者が巨額の負債を負わないですんだり、あるいは倒産の手続きが簡素ですんだりすれば、 金銭的・時間的・そして精神的なコストが低くてすみます。そうであれば、その起業家はすぐに立ち直って、また次の事業を起こせるかもしれません。

たたみやすさが起業を促す

 そして繰り返しになりますが、不確実性が高いということは、 成功したときのリターンが大きいということでもあります。例えば仮にその事業が上場までたどりつければ、そこから得られる収益ははかりしれないものがあります。

 「もし会社が潰れても、そのときはきれいに事業をたためる」のであれば、その分だけ「失敗したときのコストは小さく」 、他方で「成功した時のリターンは大きい」のですから、より積極的に起業を始める人が増えることが期待できます。まさにリアル・オプションの考え方です。

 では、どうすれば会社を「たたみやすく」できるのでしょうか。例えば2010年に出版されて話題になった磯崎哲也氏の『起業のファイナンス』(日本実業社)では、起業をする人は、事業をたたみやすくするための資本政策や契約についてあらかじめ考えておくべき、との主張がされています。

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