逆に言えば、米国の経営学界がこのような状況ですので、この「学術的な成果を背景にした経営分析ツールを開発する」分野は、実はかなりのポテンシャルがあるはずです。

 そしてこの意味で私が期待しているのは、学術論文を書くことに忙しい学者ではなく、こういったことに問題意識のある実務家やコンサルタントです。こういった方々が、たとえば拙著で紹介したような学術論文を読まれて、そこから自身の実務的な知見をもとにビジネスで使える分析ツールを開発するという分野が発展するなら、それはとても素晴らしいことではないでしょうか。

 実際、そういう方々は少しずつ日本でも現れているようです。たとえば、東京都にあるインテグラート社(小川康社長)では、学術研究でも注目されている「リアル・オプション理論」を応用し、現実のビジネスシミュレーションに落とし込んだソフトウェアを開発・販売しています。

「経営分析ツール業界」はまさに「ブルー・オーシャン」

 リアル・オプションは経営戦略論で研究されている学術理論です。そして、同分野の第一人者である米ペンシルバニア大学のイアン・マクミラン教授や米コロンビア大学のリタ・マグラス教授などが、その学術的な成果を実践に使えるように落とし込んだ実務論文を、HBRなどに多く発表してきました。

 そして、マクミラン教授に直接指導を受けた小川氏(とインテグラート社)が、その意思決定ツールをもとに、実務の意思決定の助けになるソフトウェアを開発したのです。これは「学術研究→ツール化→ソフトウェア化」と、学術的な成果が「落とし込まれて行った」素晴らしい成果の1つでしょう。

 とはいうものの、このような事例はまだ希有だと思います。私は、ぜひ意欲のあるコンサルタントや実務家の方々に、もっと世界の経営学のフロンティアの学術論文を読んでいただいて、そこから得られる知見からツールを生み出してもらえないだろうか、と期待しています。欧州経営大学院(INSEAD)のチャン・キム教授風に言えば、これは、まさに「ブルー・オーシャン」の分野なのかもしれません.

 ちなみに、このブルー・オーシャンも私の理解では 「ツール」であって、「理論」ではありません、、、念のため。

注:HBRの日本版は『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』としてダイヤモンド社から刊行されています。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年4月16に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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