もちろんこういったMBAの教科書にも、新しい経営理論・法則の一部は記述されています。しかし、ポーター教授のファイブ・フォースのように、実践に使いやすいところまで練られたツールとして落とし込まれないために、結果として「枝葉」に留まっているのではないでしょうか。(なおこれは、取って代えられないほど普遍的なツールを生み出したポーター教授の偉大さも物語っています。)

 では、なぜ経営学者による「分析ツールに落とし込む努力」が十分でないかというと、それはまさに「HBRに論文を書いても業績にならない」という米経営学界の実状と直結しているように思います。

 前述したように、学者にとって「ツール化」は業績に結びつかないのですから、学術的な研究と比べて関心が薄くなるのは当然です。そうであれば「経営学者から多くの経営分析ツールが提案されて、それらが切磋琢磨して、みなさんの役に立つようなツールが絞り込まれていく」という状況は期待できません。

学術成果と実務をつなぐパイプはまだ乏しい

 私は、経営学者の学術研究重視がダメだ、と言いたいのではありません。物理学の知がなければエンジニアリングの発展もないように、経営分析ツールを生み出すためにも、まずは「経営の真理法則」を学術的に探求することが重用だからです。

 他方で、私は経営学が「実学」としても発展して欲しいと願う1人です。これだけ学術的な成果があがっているのに、それらがビジネスパーソンに届いていないのはもったいない、と思うのです。

 実は、私が拙著『世界の~』を書いた理由の1つもこれでした。

 この本では、上記の様な理由で、すぐに実務に役立つような「分析ツール」は紹介できていません。その代わり、世界の経営学者たちがフロンティア進めている研究の知見をそのまま、噛み砕いてお伝えしています。ビジネスパーソンが読めば、その知見の中から何かを「汲み取って」くれるかもしれない、と考えたからです。実際、「この本は今すぐには役立たないかもしれないが、ビジネスを深く考え直すきっかけになった」と言ってくださる方がとても多いのです。

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