米国上位の各ビジネススクールには、学術誌に対して「A」、「B」といったランク付けがあります。たとえば私のいる米ニューヨーク州立大学バッファロー校の基準では、経営戦略論分野なら『ストラテジック・マネジメント・ジャーナル』が代表的なA学術誌の一つです。国際経営分野では『ジャーナル・オブ・インターナショナル・ビジネス・スタディーズ』がAになります。そして繰り返しですが、このランキングにHBRは入っていません。

 このように、学術誌に科学的なアプローチを使った研究成果が発表されて「経営学の知」が積み上がり、世界の経営学はここ20年ほどで飛躍的に進歩してきました。

 さてここからがポイントなのですが、経営学という学問のユニークな点は、この学術誌で発表された経営法則を、そこで終わらせずに、みなさんのビジネスに使ってもらうことを考える必要があることです。

  経営学は「実学」の側面を持っていますから、その知見を実践に応用してもらうことは大事な課題です。そしてそのためには、学術誌で発表された経営理論・法則を、実務での経営分析や意思決定に使いやすいように落とし込む必要があります。ここでは、それを「分析ツール」と呼びましょう。

HBRは先端の「経営分析ツール」を学ぶ格好の場

 事業計画などで使われる分析ツールは、コンサルティング会社などが自らの経験から生み出したものが多くあります。たとえば、ボストン・コンサルティング・グループが考案した「BCGマトリックス」は多角化戦略の分析でよく使われます。

 他方、 学術的な理論に基づいて生み出された分析ツールの代表は、米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授による「ファイブ・フォース」でしょう。米国のMBAでは間違いなく勉強させられる有名なツールです。

 これは、1970年代に経済学(産業組織論)で打ち立てられたSCP(Structure-Conduct-Performanceの略)という理論フレームワークを基に、ポーター教授が実践向けのツールとして生み出したもののです。SCP理論では、たとえば「競争的な事業環境にいる企業ほど、収益性は低くなる」という命題があります。しかしこの命題だけでは、実践でどうやって「その事業環境が競争的か」を分析したらいいか、わかりません。

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