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20年遅れで問題が顕在化する日本

久米さんはアメリカで、父親の育児参加とその影響について研究されていますが、家庭における父親の権利についても男女平等を求める動きがあったわけですね。

久米:日本でもイクメンという言葉がありますが、同じ動きがアメリカでは70年代からあったんです。女性が社会進出している以上、男性も家事育児をやらなくてはという意識の変化があって、男性も育児参加していったのですが、いざ離婚という事態になると、子供の親権を得るのは母親が有利。男性側は慰謝料とか養育費の負担がある一方、子供にはなかなか会えないという状況がありました。それに対して、共同で養育する権利がもっと欲しいと父親運動が始まりました。男性も育児をすることが常識化した中で、実際に法律も変わってきました。

家事労働を含めた男性と女性の労働時間を比較すると、男性の方がより長時間働いている。それなのになぜ養育の権利は平等ではないのだ、というわけですね。そのあたり、日本は状況が違いますね。日本の男性の家事労働の時間は国際的に見て非常に短く、離婚する時も男は家事育児ができないから親権は母親へみたいなところがありました。

久米:まだそういうところはありますが、それは女性の変化と同時並行で変わっていくんじゃないでしょうか。

 日本は女性の社会進出がアメリカと比較して20年ぐらいの後追いです。すべて20年分遅れて同じように進んでいると思います。例えば、DVに関する法律は、日本は2000年代の初めにできましたが、アメリカは80年代にできていたので、それに伴ういろいろな問題も先に経験しています。そういう意味では、女性の社会進出がある程度進まないと男性の問題も解決しないでしょう。

 特に親権の問題は、日本はすごく遅れています。単独親権で母親の立場がすごく強い。ハーグ条約の国際的連れ去り問題でも批判されていますが、離婚調停中に子供を実家に連れて帰るというのが慣習的に黙認されていたので、父親はいきなり子供を取られてそれきり会えないと。

 アメリカでも父親が不利な時期はあったんですが、全く会えないなんてことはなかったんです。

日本は、母と子供がセットみたいな意識がありますよね。

久米:アメリカでも昔はそうでした。でも徐々に、父親も育児ができるし、母親と一緒にいれば子供は幸福というわけでは必ずしもなくて、子供にとっては両親は両親だから、たとえ別居していてもちゃんと愛情交流すべきという考え方が今は主流になっています。

日本の場合、離婚した父親が養育費をちゃんと払っている割合が約2割と、非常に低い。

久米:それも、父親の権利が弱いことと裏表の関係だと思いますね。全く会っていないと父親も子供を育てているという認識がなくなってきて、養育費を払わなくなり、悪いスパイラルにはまってしまう。結局、父親は子供のことは忘れなさいみたいになってしまう。日本の父親が無責任というよりは、今までコンタクトを絶たれていたことも大きいでしょう。自分の子供にちゃんと愛情と責任を持つために、法改正を求めて頑張っている人たちもいます。