暴力事件の被害者の多くは「男性」
犯罪において、一般に「男性は加害者、女性は被害者」のような先入観がありますが、現実には暴力事件の被害者の大半は男性。例えば本の中で引用されているアメリカのデータでは、殺人事件の被害者の74.6%が男性なんですね(1991年)。ちなみに日本では殺人被害者の60.6%が男性でした(2009年)。
ただ、特に性犯罪や性的虐待については、被害者は女性だと考えがちですが。
久米:日本の場合、例えば強姦は「男性への強姦」を想定していないので、被害者の統計に男性は全く入っていません。イギリスやアメリカでは90年代に、男性に対するレイプを対象に含めたので、そこからやっと男性のレイプ被害が表に出てきます。男性も性被害に遭うし、加害者は女性も男性もなり得るのですが、性犯罪として認識されていませんでした。
日本で特に問題になると思うのは少年の性被害です。これはどの国でもあるんですがなかなか認識されませんでした。被害を受けた人をちゃんとフォローする仕組みがないとレイプの連鎖が起きたり、自分を責めて苦しむという事態になってしまうのに、男性側が声を上げなかったり、真剣に取り合わないという状況がありますね。
一方で興味深かったのが、被害者ではなく加害者である場合、司法における女性バイアスがあるという指摘です。つまり罪を犯したのが女性だと、男性よりも量刑が甘くなる傾向があるという。
久米:司法側もいろいろな人がいるでしょうが、保守的な人ほど、女性はか弱いから保護するべきとか、たとえ犯罪を犯しても誰かに命令されたんだろうとか、ある意味男尊女卑と連動した古い通念があるので、それがバイアスになっているでしょうね。
例えばアメリカでも日本でも女性に対する死刑判決や執行は少なく、基本的に死刑囚は男性、というのが現実です。もちろん死刑反対の議論もあり難しいところですが、本来は、同じ罪を犯したならば量刑も同等であるのが公平でしょう。
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