ところが、最近はたとえば米国のシリコンバレーと台湾、シリコンバレーとインドのバンガロールなどのあいだで、起業家やエンジニアが国境を越えてインフォーマルな情報・知識をやりとりするようになっています。これまではローカルだったインフォーマルな知識が、国を超越して行き来するようになってきているのです。

台頭する超国家コミュニティー

 そしてその牽引役が「移民ネットワーク」であることが、最近の研究で明らかになりつつあります。

 たとえば、米デューク大学の調査によると、1995年から2005年にシリコンバレーで設立されたスタートアップのうち53%は、設立メンバーに移民がいるそうです。このような人たちが米国で事業に成功して、やがて本国に帰り、その後も本国と米国を足しげく往復することで、これまでは一定地域に集積していたインフォーマルな情報・知識が、国境を越えて「飛ぶ」ようになってきているのです。

 拙著『世界の~』でも紹介していますが、このような移民の起業家・エンジニア・研究者などが国境をまたいで活動することでインフォーマルな「超国家コミュニティー」が出現していることについては、米カリフォルニア大学バークレー校の社会学者、アナリー・サクセニアン教授の研究が有名です。同教授の著書「最新・経済地理学」や「現代の二都物語」(共に日経BP社)は日本でも出版されています。

 そして経営学でも、超国家コミュニティーを介して(1)これまで遠くに「飛ばなかった」知識が国と国をまたいで移動・循環しつつあること、(2)国境を越えたベンチャーキャピタル投資が促進されていること、そして(3)超国家コミュニティーに関係している起業家ほど本国で輸出ビジネスを成功させやすいこと、などが実証研究の成果として発表されるようになってきているのです(詳しくは拙著をご覧下さい)。

 ところで、超国家コミュニティーが興隆しているのは、起業分野だけではありません。実は、まさにアカデミックの世界、なかでも私がいる米国の「ビジネススクール業界」でその台頭が顕著なのです。

米国の大学業界を席巻するインド移民

 2013年2月、米国の名門カーネギーメロン大学が、新しい学長として、現マサチューセッツ工科大学(MIT)エンジニアリング学部のスブラ・スレッシュ教授を任命することを発表しました。スレッシュ氏はインド・ムンバイの出身で、学部はインドの大学を卒業しています。

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