池袋に新華僑が集まるのは「周辺に日本語学校が多い。交通の便が良い割に、駅近くに安く借りられるアパートがあるから」と言う。アルバイト先を見つけやすいことも池袋が中国人を引き付ける原因になった。最近は裕福な留学生も増えたが、かつての中国人留学生は大半が渡航費用を借金して来た。返済のために働かなければならない。新華僑が住む地域は次第に北に広がる傾向を見せており、板橋、十条、赤羽や埼玉県に住む人も多い。こうした後背地を抱えた、新華僑の拠点として池袋チャイナタウンがある。

 新華僑が増えたことで、日本に住む中国人の数は外国人全体の3分の1を占め、首位に立つ。その数は、2011年末で約67万5000人に達した。だが、国外移住を目指す中国人にとって日本は一番人気の国ではない。日本文化に関心を持つ人も少ない。彼らが最も憧れるのは米国だ。実際、中国の裕福なエリート層は米国に留学している。では彼らはなぜ日本に来るのか。

 1つは、日本が「留学生30万人計画」を打ち出すなど、受け入れに熱心なこと。より魅力的なのは、留学生にアルバイトを認めているので、働きながら勉強できることだ。日本語学校や専門学校に籍を置いているものの、アルバイトに精を出し、学業よりもお金を稼ぐことに忙しいという人が少なくない。

 また中国はコネ社会で、有力な人脈を持っていないと、国内で成功できるチャンスは少ない。中国にいても、うだつが上がらないと考えた人が人生のリセットを求め、日本でのサクセスストーリーを夢見てやって来るのである。

女性起業家たちが活躍

 池袋で活躍する中国人起業家にはなぜか女性が目立つ。

中華料理店「逸品火鍋」を経営する綾川陽子さん

 池袋駅北口から徒歩2分の雑居ビル内にある「逸品火鍋」。中国東北地方・大連出身の綾川陽子さん(39歳)が経営する中華料理店だ。店内は赤と黒を基調にしたモダンなインテリア。本国からコックを呼び、東北料理と四川料理を供している。客はこの辺の店では珍しく日本人が目立つ。従業員に日本人向けの接客教育を施すなど営業努力をすることで、順調に売り上げを伸ばしている。

 綾川さんが来日したのは1998年。中国で大学を卒業し、国営企業に勤めていたが、海外に出てチャレンジしたいと思うようになり、米国留学を夢見た。だが、資金もなく、いきなり行くのは難しい。まず勉強しながらアルバイトができる日本に来て資金を貯めることにしたのだ。

 日本での生活は非常に忙しかった。朝4時に起きてホテルの清掃をした後、日本語学校に行く。夕方からまた清掃の仕事をして、深夜遅く帰宅する毎日だった。大学院に進学した後も牛丼店、コンビニ、ラーメン店など色々なアルバイトを続けた。そして、過労でついにダウン。米国留学はあきらめた。

次ページ 新華僑のハングリー精神が作り出す世界同時現象