言葉の源流から考えて、もっともホスピタリティーがあふれているべきところはどこでしょうか。hospital(病院)です。この語根のhospitの語源はラテン語のhospesで、動詞のhospitareは「客をもてなす」。hospitalitemは「客に対するもてなし」。それが古フランス語のhospitaliteとなって現在の英語となりました。

 宿泊や飲食などに関わるビジネスは「ホスピタリティー産業」と呼ばれることがあります。もちろん「早い!安い!」で勝負しているところもありますが、ここでは「感じの良さ」で勝負しているタイプのビジネスもあります。ホスピタリティーがあって「いい感じ」を受けると、人はお金を払います。しかも、かなりの。

ホスピタリティーは主人が行うおもてなし

 

 ホスピタリティーとサービスは似ているようで異なります。既に述べたように、サービスという言葉は「サーバント」につながるもの。つまり「主従関係」における「従」の側から発想した言葉です。

 それに対して「おもてなし」はもてなす側が行うこと。つまり「主」の側に視点があります。

 ホスピタリティーであれ、おもてなしであれ、もともとは報酬を期待して行うことではありませんでした。これらの言葉は、相手に喜びを与えることに価値を見いだしている点において、共通しています。しかしながら、おもてなしが価値を生むことで、それ自体がビジネスとして成立するようになる過程で次第にサービスとの境界線があいまいになっていったとも考えられます。

 「おもてなし」にはいくつかの段階があります。まず、基本的に無礼や失礼がないこと。「マイナスがない」ということと言ってもよいでしょう。次に、準備が行き届いていること。スムーズにもてなすためには、様々な状況を想定して相応の準備を行うことが必要です。

 さらに、実際の接遇の「本番」においては、かゆいところに手が届くこと。その基本は「相手のことを思う」ことです。最後に、期待をはるかに上回ること。それらを超えた感動があること。これらが満たされると顧客からの謝礼の気持ちが返ってきます。それが利益の源泉となります。

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