日経ビジネス2014年2月17日号の特集「昭和な会社が強い」では、平成になって流行した経営手法やIT(情報技術)にあえて背を向ける企業のケーススタディーを掲載した。

 社員間の円滑なコミュニケーションで組織力を高めると期待された「報・連・相(ほうれんそう)」もその1つ。IT化の進展や携帯、スマホの登場などコミュニケーションツールも増え、企業は益々、声高に「報・連・相」の重要性を叫ぶようになった。だが、目的を誤ると、思わぬ罠に陥る。

 「今、名古屋駅です。これから新幹線で戻ります」

「報・連・相」をあえて禁止している岐阜県の未来工業。「営業日報もムダだから廃止した」と語る山田雅裕社長

 出張先から携帯やスマホで上司に連絡を入れる。常に自分の居場所を上司に知らせるのはビジネスパーソンの基本。ごくありふれた光景に映るだろうが、こうした連絡を全社的に禁止しているのが岐阜県にある未来工業だ。

 「小学生ではあるまいに、なぜ、いちいち連絡をしてくるのか。通話料も無駄だし、かけてくる社員の時間はもちろん、受ける事務員の時間も無駄」とばっさり切り捨てる。

 それだけではない。数年前、同社では営業日報も廃止した。

 山田雅裕社長は「『どこどこを訪問してカタログを置いてきた』といった報告を書かれてもなんの参考にもならない」と廃止した理由を語る。

多くの職場で「報・連・相シンドローム」が起きている

 報告、連絡、相談のそれぞれ一文字目をつなげた「報・連・相(ほうれんそう)」。この“経営ワード”が世に広まるきっかけとなったのは1986年のこと。当時、山種証券の会長だった山崎富治氏が自身で実践した「ほうれんそう運動」の経験をまとめた書籍『ほうれんそうが会社を強くする』を出版、大きな反響を呼んだ。

 1986年は昭和61年。日本経済はバブルを迎え、日本企業の歯車はどこかきしみだした。そして平成に入り、バブルは崩壊した。業績が急降下するばかりではなく、社内からバブル時代のさまざまな問題が表面化してきた。

 この状況を乗り切るには、まずは社内の透明化を図り、バブル時代の膿を出した上で、社員の結束を強めるほかにない。大きな投資がなくとも始められる「報・連・相」に多くの企業が飛びついた。

 そして「報・連・相」はIT(情報技術)化の進展ともに進化した。パソコンとインターネットの普及によりメール、グループウエアなど情報共有のためのツールも発達した。さらにスマホの登場により、いつでもどこでも報・連・相が可能になった。

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