部下の意識や行動を変えるには、まず自分が変わらなければならない。そうしないと何も始まらない。

 こう信じて疑わない上司がいます。理想はそうかもしれませんが、本当にそれで良いのかと私は思います。上司が変わらない限り、部下も変わりようがないということなのでしょうか。

 次の会話文を読んでみてください。

○部長:「目標を絶対達成する、そういうマインドを鍛えてほしい。先日、社長が言っていた通りだ」

●グループリーダー:「はい。まったくその通りです」

○部長:「目標を達成するのは当たり前だ。『達成しても達成しなくても、どちらでもいい』とか、『達成できないのは目標が高いから』などと言うのは、本当に止めてもらいたい」

●グループリーダー:「ええ……。そういうスタッフがいますから気を付けたいです」

○部長:「どうすれば目標が達成できるのか。それを日々考えることが大事だ。そして行動することだ。行動もせず、考えもせずに、『無理』『難しい』などと発言するようでは駄目だ」

●グループリーダー:「場の空気が悪くなりますからね」

○部長:「その通り。空気を汚す発言は慎んでほしい。空気に感化される若い人もいるのだから。とにかく営業部員の意識改革が必要だ」

●グループリーダー:「分かりました。まず私から変わりたいと思います」

○部長:「え?」

●グループリーダー:「私が変わらないことには部下も変わりませんから」

○部長:「何を言っている。そんなことはいいから、部下の意識改革を優先したまえ」

●グループリーダー:「いえいえ。部下の意識を変える前に、上司である私の意識を変える必要があります。だってそうじゃないですか。私の意識や行動が変わらないと、部下だって納得しません」

○部長:「机の上を整理整頓したまえ。私がこう言ったら君はどうする」

●グループリーダー:「は? もちろん、やりますよ。部長の指示ですし」

○部長:「知っていると思うが私は整理整頓が苦手だ。机の上は整理されておらんよ」

●グループリーダー:「経営会議の資料とか、部長になると色々必要だからでしょう」

○部長:「いや。資料なら君のほうが沢山持っている。私は単に整理整頓が苦手なんだ。何とかしなければと思っているが。もう一つ聞く。朝から大きな声で挨拶しなさいと私が言ったら従うか」

●グループリーダー:「何ですか、さっきから。従いますよ」

○部長:「私は大きな声で挨拶しないがな」

●グループリーダー:「ああ、それは……部長ぐらいになったら、そんなに大きな声で挨拶しなくてもいいと思います」

○部長:「いやいや、社長も専務も、すごく大きな声で挨拶されるじゃないか。部長だから大声で挨拶しなくていい、なんてことはない。実際、専務から先週怒られた。『部長の君が大きな声で挨拶しなさい』って」

●グループリーダー:「はあ……」

○部長:「つまりだな、君は私の指示には従う。私がそのことをやっていようが、やってまいが」

●グループリーダー:「確かに」

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