ちなみに私もピッツバーグ大学のPh.D.プログラムに通った5年間、学費はタダでしたし、給料ももらっていました。おかげでPh.D.学生時代に結婚もしましたし、子供まで授かってしまいました。

(3)学位をとれる確率

 欧米の上位MBAプログラムに合格するのが難しいことはいうまでもありませんが、他方で入学後にMBAをとれないまま落第する確率は、かなり低いのが実態だと思います。少なくとも私の周りで、勉強についていけなくてMBAを取れずに退学した人はいません。

 念のためですが、私はMBAが簡単であるとか、ラクである、とは言っていません。欧米のMBAでは毎日ものすごい量の課題を課せられ、ほとんど眠れないぐらいに勉強させられるのが普通です。相当に鍛えられることは間違いありません。しかしながら、たとえば通常MBAでは一学年に数百人の学生が入学しますが、その中で落第するのは多くてもせいぜい数人ではないでしょうか。

 他方でPh.D.は、入学してからからの落第リスクも非常に高いのが特徴です。

 これは他の学術分野にもあてはまりますが、通常、米Ph.D.プログラムでは最初の2年間で徹底した詰め込み式の教育を行い(コースワークといいます)、そして2年目終了時に大きな試験が課せられます。そしてその試験(あるいは追試)に不合格だと、そのままPh.D.を退学させられます。私自身も脱落した学生をみてきましたし、今は教員として「学生を落とす」判断を下さなければならないときもあります。また、長いPh.D.生活の途中で自主的に去って行く学生もいます。

 米Ph.D.で学生が生き残る率は大学で差がありますし、学術分野でも差があります。私の体感なので確かではありませんが、アメリカの上位・中堅の経営学Ph.D.で学生が最後まで生き残る割合は、平均で60~65%ぐらいではないでしょうか。たとえば私の周りでは一学年に10人ぐらいを入学させるPh.D.プログラムが多いのですが、そのうち3~4人がPh.D.を取得せずに去ることになります。

 ちなみに、この「Ph.D.取得の率」は他分野ではもっと低くなることもあります。たとえば経済学では、一学年30人ぐらいのPh.D.学生を多めに入学させて学費も払ってもらい、その後の試験で大量に退学させ、生き残った精鋭10人ぐらいの生活をPh.D.取得まで面倒みる、というのが私のよく聞く話です。ピッツバーグ大学の公衆衛生学部Ph.D.では、学生が生き残れる率は10%ぐらいと聞いたことがあります。逆に言えば、経営学Ph.D.は(6割以上も生き残れるのだから)比較的好条件なのです。(繰り返しですが、大学間でかなり差があることはご留意下さい)

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