ここでは両者の重要な違いを3点述べます。

(1)目的

 まず、プログラムの目的が根本的に違います。

 MBAプログラムとは、「職業人」として高度な経営の知識をもった人たちを養成するところです。通常MBAは1~2年のプログラムですが、その目的は「短期間で経営学の理論から実践的な知識までの習得を行い、ビジネス界に優秀な人材を輩出する」ことです。

 他方でPh.D.プログラムとは、5~6年をかけて経営学の「研究者」を養成するところです。これまでの連載でご紹介したように、米国の上位ビジネススクールの教授の多くは「研究重視の経営学者」であり、彼らは学術誌への論文の掲載を通じて、激しい知の競争を演じています。

 もちろん最終的に民間企業に就職する人もいますが、米国の経営学Ph.D.の第1の目的は、こういった「知の競争に参加する」経営学者(=多くはビジネススクールの教員)の育成にあります。

 みなさんの中には、Ph.D.はMBAの延長であるようなイメージを持たれていた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、両者はまったくの別物です。Ph.D.をとるのにMBAは必要条件ではありません。私もMBAは持っていません。

(2)学費

 よく知られていることですが、米MBAプログラムの学費は高額です。名門私立大学MBAの学費は2年間で8万ドル(700万円ぐらい)ぐらいかかるようです。加えて生活費もかかります。実際、日本から海外MBAを目指す方々のネックになるのは、入学の難しさに加えて、このお金の問題でしょう。

 他方で、全ての大学でそうというわけではありませんが、アメリカの上位ビジネススクールPh.D.プログラムの多くでは、学費は無料です。

 「えっ、ほんと?」と驚かれる方もいるかもしれませんが、本当です。学生は奨学金をもらったり、研究助手として一年目から働く代わりに学費を免除されたりします。それどころか、生きて行くにはなんとかなるぐらいの給料まで支給してくれるPh.D.プログラムも多いのです。