三島:強い副作用などの場合もありますが、プラセボ効果(偽薬効果)の壁を越えられずに失敗に終わることがとても多いんです。

プラセボ効果?

三島:簡単に新薬認可の流れを説明しますと、多数の被験者(患者さん)にご参加いただいて承認前の新薬を試してもらうんですが、被験者の約半数には、新薬と形がそっくりだが全く有効成分を含まない「偽薬」を飲んでもらうんです。すると、どうなると思います?

そりゃあ、新薬候補を飲んだ人の一定数は効果が出るだろうし、偽薬を飲んだ人は何の変化も起きないはずです。有効成分が入っていないんだから。

三島:現実には、「実薬」を飲んだ人だけではなく、偽薬を飲んだ人にも相当な効果が出てしまうんです。偽薬でも「薬を飲んだ」という期待感が精神に作用し自然治癒力を引き出すのではないか、と解釈されています。プラセボ効果はすべての薬剤で認められますが、抗鬱薬、睡眠薬、痛み止め、酔い止めなど、精神神経系に作用する薬ではとりわけプラセボ効果が出やすい。例えば、実薬の効果が出た人が70%、偽薬が60%とかいうケースも珍しくありません。

本物と偽物でそこまで差が出ないんですか!

日本の社会保障問題を解決する秘策

三島:いずれにせよ統計的に有意な差が出なければ新薬として認可はされません。ここをクリアできない新薬候補物質が相当数あるんです。

人間の精神の力というものは凄いものがあるんですね。今の話を聞いて思いついたんですが、偽薬でもそこまで効果が出るなら、日本全体で一定分野の薬は全部、ある段階からしれっと偽薬にすればいいじゃないですか。そうすれば、膨張の一途を辿る日本の医療費も相当抑制されると思いますが。

三島:そのためには国民全部に嘘をつく事が必要になります(笑)。「偽薬だ」と知ってしまったとたんにプラセボ効果は消えてしまいますから、現実的には難しいでしょうね。でも僕個人も、一定の分野の治療に関しては、薬よりも心理療法や生活習慣指導の方が有効なんじゃないかとも思っているのは事実です。薬の副作用が出やすい高齢者や子供などは特にそうです。

先生、そんなこと言っていると、テレビどころか海外の巨大製薬会社などからも…

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