バブル景気の最中の1990年に作家の谷村志穂さんが「結婚しないかもしれない症候群」というエッセイを発表して、女性から圧倒的な支持を得ました。結婚するか否かは個人の自由ですが、急速に非婚化と晩婚化が進んだ面が否めません。

婚外子を保護する手厚い制度があるフランス

 その半面、社会通念は未だに根強く残っています。2003年に作家の酒井順子さんのエッセイ「負け犬の遠吠え」がベストセラーになりました。30歳以上で未婚で子どもがいない女性を自虐的に負け犬と呼んでいますが、その前提には古い道徳観がありそうです。

 フランスは婚外子を保護する手厚い制度があるために、結婚にとらわれずに出産・子育てをするカップルが増えていますが、結婚志向の強い日本では、フランスの事例が必ずしも参考にならないでしょう。

 ―― 民主党政権は2010年度から子ども手当ての支給を始めます。政府の少子化対策をどのように捉えていますか。

(写真:的野弘路)
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 経済的な援助は必要ですが、それだけで少子化に歯止めがかかる思いません。子ども手当ては現在、15歳以下の子どもがいる世帯への支援であり、これから子どもを産む人々への直接的な支援ではありません。

 いずれにせよ間接的にはなるのですが、若者の2人に1人は非正規雇用なので、その世代の所得が増えるような成長戦略が必要なのではないでしょうか。

 また、海外の諸制度の受け売りだけでなく、日本独自の新しい類型も考える必要があります。1960年代から急速に核家族化が進み、それに社会の意識が追いついていません。

 子育てや介護に関する公的支援があるとはいえ、家族が家族の面倒を見る風土は残っています。国が押し付けることではありませんが、少子化対策には新しい家族像を模索することが欠かせません。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2010年2月17日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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