民主党政権の政策が機能して、仮に出生率が2以上に回復しても、2070年頃までは人口は減少し続ける。少子化対策には非常に息の長い取り組みが必要です。
―― 政策のほかに少子化が進んだ背景をどのように分析していますか。
1つは経済成長のスピードが速すぎたことです。経済成長によって社会構造が急激に変わってしまい、それに社会福祉などの諸制度が追いついていません。
共働きが主流であるにもかかわらず、保育園が十分に整備されずに待機児童が増えてしまっているのはその典型です。日本と同じように経済成長が進んだ中国や韓国、台湾では少子化が進んでいる。少子化は先進国の共通の課題です。
権威主義的な家族制度を持つ国で少子化が進む
2つ目は家族制度です。フランスの人口学・社会人類学者のエマニュエル・トッドさんが指摘してますが、日本のような男性優位で権威主義的な家族制度を持つ国では少子化が進行しています。
子育ては母親の役割と決められてしまうと、共働きしながら出産や子育てをするのは難しくなってしまう。ほかには、旧ソ連圏やドイツ語圏、儒教圏などが同じ分類になります。
一方、権威主義的な家族制度がない地域では以前から核家族化が進んでいます。共働きも多く、夫婦や地域が子育てを協力し合う風土があります。欧州の北海沿岸にそうした地域が多く、これがフランスや北欧で出生率が高い要因とする分析もあります。
―― 少子化には社会的なイメージも影響しているのではないでしょうか。
日本は権威的な家族制度がある反動で、社会的なイメージが振り子のように大きくふれやすい。
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