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ミニ氷河期の到来を断言はできない

 ジャルコヴァ教授はメディアの報道に驚きを隠さない。世界中のメディアが「ミニ氷河期が来る」といったトーンで報道したことに戸惑い、後日、「気候変動には言及していません」と述べた。

 ただ「(気候に)変化があるという予測にはたぶん同意しなくてはいけないでしょう」とも述べており、教授の発言には矛盾を感じないでもない。学者として研究内容を数値で示すことはできても、15年後に地球規模で寒冷化現象が起こるかどうかは断言しづらいということだろう。

イヌイットに伝わる氷河期の周期

 筆者は氷河期について、過去に興味深い話を聞いている。米アラスカ州北端に位置するポイントバローという町でイヌイット(先住民族)を取材した時のことだ。

 生存捕鯨を行うためにカヌーで北極海にこぎ出していた男性は、なんら迷った様子を示すこともなく氷河期について話をした。

 「イヌイットの間では、氷河期の周期は5万年と言われている。最後の氷河期が終わってからすでに1万年以上が経っているから、現在は間氷期だ。地球温暖化の話がでているが、間氷期だから地球の気温が上昇するのは当たり前だろう。あと数万年経てばまた氷河期がやってくる」

 イヌイットは民間伝承という形で、過去の出来事や史実を子孫に口頭で伝える文化をもつ。アザラシの毛皮を着たこの男性は、5万年という氷河期の周期について「間違ってはいないはずだ」と自信をもって語った。

 氷河期には数万年の短期的なサイクルのものと、5億年ほどの長期的なサイクルのものに分類できるようだ。長期サイクルを見れば、地球が誕生して以来、氷河期は4回あった。最古の氷河期は24億年も前だと言われる。

 短期サイクルを見れば、過去300万年の間、氷河期が終わって次の氷河期が来るまでに4万~10万年の年月がかかっている。科学の世界ではすでに、地表の調査などから過去の氷河期が特定されており、イヌイットの伝承として聞いた「5万年」という周期は大きくは外れていないことがわかっている。