これは私の認識ですが、ポーター教授やクリステンセン教授の大きな功績は、「黎明期の経営学に新しい考えを打ち出し、その時代を切り開いた」ということに加えて、何よりも「その研究成果を“一般の書籍”として発表して、ビジネスマンも含めた幅広い人々に影響を与えた」ことではないでしょうか。

 このフォーチュンの記事でも強調されているように、ポーター教授ほど近代経営学に影響を与えた偉大な学者はいません。そしてその影響は、学術論文以外の手段によるところが大きいのです。その著書である『競争の戦略』の引用数はとてつもない数になっていますし、MBAの授業で使われる経営戦略論の教科書は、今でも同教授が生み出したコンセプトや分析ツールから始まっているものがほとんどです。

 クリステンセン教授も同様です。実は『世界の~』でも書いたように、『イノベーションのジレンマ』は米国の経営学研究の世界ではそれほどには重視されていないのですが、それでもイノベーションを生み出すことに悩む世の実務家にこれほど影響を与えた本はないでしょう。

求められているのは、ポーターか、コグートか

 ここまでの話を整理しましょう。外部からみると同じように見えるかもしれない米国のビジネススクールの教授は、実はおおまかにいって3つのタイプに分けられるのです。

タイプ1:査読論文を学術誌に掲載することを主戦場とする経営学者(=上位のビジネススクールでは大半を占める)

タイプ2:教育中心の教授(=ヨッフィー教授や、バブソン・カレッジの教授などに代表される)

タイプ3:査読論文を学術誌に掲載するのではなく、一般書籍など別の形で経営学や実務家に幅広く影響を及ぼす経営学者(=ポーター教授や、クリステンセン教授など)

 そして「タイプ1」の教授に加えて、「タイプ2」の教授の割合も高く、さらには研究大学としては異例なことに「タイプ3」の教授までもが中心的存在として活躍しているのが、HBSなのです。その意味で私は、「HBS(だけ)をみてアメリカのビジネススクールと思うなかれ」と申し上げたのです。

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