今日の診察:胆嚢ポリープ
 胆嚢ポリープの主なものは、(1)コレステロールポリープ、(2)過形成性ポリープ、(3)線維性ポリープ、(4)化生性ポリープ、(5)腺筋腫症、(6)腺腫、(7)ガンの7つ。一般に多く見られるのは、コレステロールポリープだ。重要なのは、ガンや前ガン状態と見なされる腺腫との鑑別である。
イラスト:市原すぐる

 胆嚢は肝臓の下にくっついている袋状の臓器で、胆汁(肝臓で作られる脂肪の分解を助ける消化液)を一時的に貯蔵している。1980年頃から検診や人間ドックに簡便な超音波検査が導入されるようになって、無症状のまま胆嚢小隆起性病変(胆嚢ポリープ)が偶然発見される機会が多くなった。当院の人間ドックでも受診者の10%程度に胆嚢ポリープが発見されている。

 胆嚢ポリープの主なものは、(1)コレステロールポリープ、(2)過形成性ポリープ、(3)線維性ポリープ、(4)化生性ポリープ、(5)腺筋腫症、(6)腺腫、(7)ガンの7つ。一般に多く見られるコレステロールポリープは、胆汁中のコレステロールエステルという成分を食べた泡沫細胞が集まってできたもので、胆嚢の粘膜と細い茎でつながっている。このため、胆嚢を切除してみると、細い茎が切れて、胆汁の中にコレステロールポリープが浮かんでいることも稀ではない。

 重要なのはガンや前ガン状態と見なされる腺腫と、そのほかの病変との鑑別である。悪性の場合、大きさは15~20mm以上のことが多く、表面がつるんとしていて茎がないか、太い茎を持っているのが特徴である。超音波検査の次の精密検査には、造影剤を使用しない単純CT(コンピューター断層撮影装置)が有用であり、ガンは単純CTで明瞭に描出される。

 一方、単純CTで描出されないポリープは、コレステロールポリープと考えてよい。ちなみに、造影剤を使ったCTのみでは、ガン以外にコレステロールポリープも描出されることがあるので、この鑑別にはかえって役に立たない。

経過観察か手術かのどちらか

 私たちの人間ドックで発見される胆嚢ポリープは、直径5mm以下の大きさが約75%を占め、その7~8割は経過観察でも変化が見られない。5mm以下で時間が経っても変化がなく、細い糸状の茎を持ち、形がいびつな不整形で表面がぶつぶつとした顆粒状ならば、治療は必要ない。

 超音波検査で発見された後に縮小・消失するポリープが13~23%に認められた。これは、胆嚢の収縮など何らかの理由でポリープの一部がちぎれたり、糸状の茎が胆嚢壁からはがれてポリープが流れたりしたものと考えられる。人間ドックで発見されたポリープが観察中に大きくなるのは、2~3%である。

 超音波像を基にした治療方針は、大きさだけでなく、形・茎の有無・表面の性状も加味されて決まる。おおよその目安は、大きさが1~5mmなら1年ごとの経過観察、6~10mmは6カ月ごとの経過観察とする。11~15mmの場合は精密検査を行うが、それくらいの大きさでも糸状の茎であれば6カ月ごとの経過観察で十分である。

 しかし、時間が経つにつれて明らかに大きくなっていく場合や、16mm以上の場合は精密検査のうえ、手術も考えなければならない。胆嚢ポリープの手術は、現在ほとんどが腹腔鏡手術であるため、従来の開腹術に比べると患者さんの体への負担は少ない。ポリープだけを切除することはできないので胆嚢を摘出することになるが、摘出後の健康への悪影響はない。

 ちなみに、胆嚢ポリープの原因は、現状では解明されていない。そのため、これらに対する薬物療法はなく、治療方針は経過観察か手術のいずれかになる。

 胆嚢ポリープが悪性か良性かを正確に診断するためには、超音波検査やCTなどの画像診断に精通することが必要であり、それによって患者さんに最も適した治療方針が決まる。従って、専門医のいる医療機関を受診することが望ましい。(談話まとめ:田野井 真緒=医学ジャーナリスト)

 (この記事は日経ビジネス2009年12月21日号に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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