さてそうは書いたものの、実は話はもう少しややこしくなります。なぜなら、このような研究重視の風潮にはビジネススクールによって温度差があるからです。

 実は米国のビジネススクールには、大学の違いと同じように、「研究中心の教授(すなわち経営学者)」と「教育中心の教授」がいます。

 前者は、博士号を持ち、社会科学としての経営学を押し進めようとしている人たちです。もちろん授業も教えますが、上述したように主戦場は研究であり、優れた学術誌に論文を載せることです。

 後者は、たとえば博士号は取ったけれど研究よりも教育に力を入れたくなった教授や、あるいは実業界やコンサルティング業界で成功を収めてその経験を買われて教授になられた方などです。

イオンCEOやトヨタ社長を輩出したバブソン

 そしてAAUメンバーのような大学ではマジョリティーはいうまでもなく、前者の「研究中心の教授」となります。もちろん教育重視の教授もいますが、そういう方々は少数派であったり、たとえば「クリニカル・プロフェッサー」と言った特殊な肩書きがつくことが多くなります。

 しかしながら、私の知る限り、たとえば米ビジネスウィーク誌のランキングなどで上位60~70位ぐらいまでに入るようなビジネススクールの中でも、少なくとも2校、例外があります。

 1つは、「バブソン・カレッジ」です。 同校は、日本人ではたとえばイオン・グループの岡田元也 CEO(最高経営責任者)や、トヨタ自動車の豊田章男社長を輩出しています。

 バブソン・カレッジは「カレッジ」と名の付くとおり規模の小さい大学ですが、とくにアントレプレナーシップ(起業論)に特化した教育をほどこしており、この分野ではまさに「総本山」ともいえる位置づけにあります。それゆえに米国の「経営学教育界」ではきわめて高い評価を得ています。したがって、この大学では教授陣のほぼ全員が、研究以上に「優れた教育」を行うことが義務化されています。

 そしてもう1つの例外が、実はハーバード大学なのです。
 いわずとしれた世界最高峰のハーバード大学ですが、実はそのビジネススクールは、米国の上位にランクされる研究大学のビジネススクールの中では、きわめて特異な存在なのです(少なくとも私はそう認識しています)。

 というわけで、次回は「ハーバードを見て米国のビジネススクールと思うなかれ」という話をしようと思います。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2012年12月11日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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