
通常、血圧は夜寝ている間は低く、朝方から午前中にかけてゆっくりと上昇し、昼間は高くなっていく。ところが最近、目覚めるとともに血圧が急上昇する「早朝高血圧」の人が増えている。
夜間の睡眠から目覚めた直後は、体が活動するように脳下垂体が指令して副腎皮質ホルモン(コルチゾール)を分泌させる。すると、血管が収縮して血液が流れにくくなったり、血液が固まりやすくなったりするのだ。また、目覚めて交感神経が活性化され始めると、血管が収縮されて同じように血圧を上げてしまうことも関係している。
朝の急激な血圧上昇は、脳や心血管疾患の発症と深い関連があると言われている。実際に早朝から午前中は、脳卒中や心筋梗塞などが多発するとの報告があるため注意が必要なのだ。
目覚めてすぐ起き上がらない
健康な人の家庭血圧は、上(収縮期血圧)125/下(拡張期血圧)80mmHg未満で、早朝高血圧の基準値は135/85mmHg以上である。早朝高血圧には自覚症状がないので、自分で判断するには家庭用血圧計を利用するといい。早朝と夕方の一定時刻に血圧を測り、早朝高血圧の基準値が1週間程度続いたら、循環器内科や高血圧内科を受診してみてほしい。家庭用血圧計での記録と病院で測った血圧で診断される。
病院では、まず生活指導が行われる。早朝高血圧で特に注意しなければならないのは、起床の仕方だ。目覚めてすぐに起き上がると交感神経が急激に活性化して血圧を上げるので、10分ぐらいは布団の中にいて、ゆっくり起きることを心がけたい。
そのほか、食事は塩分1日6g以下を目指し、緑黄色野菜を多く取り、脂っこい食事は控える。血管にコレステロールがたまりやすいので肥満も大敵だ。たばこのニコチンが血管の壁を傷つけやすいため、喫煙も避けたい。こうした生活指導と同時に、症状によっては降圧薬や交感神経遮断薬を服用し、通院で経過を見る。
高血圧患者は、今や3950万人と言われ、30歳を過ぎたら注意しなくてはならない。しかし、それに対する危機感は乏しく、若いほど受診する人が少ないのが現状だ。高血圧は、単に血圧が高いだけではない。血管に負担がかかり続ける状態を放置しておけば、いつか必ずどこかの臓器に異常が発生する。
「高血圧治療ガイドライン」は改訂が検討されているが、現在は家庭で測る血圧の重要性を明確にしたうえで、家庭血圧の数値を発表している。若年・中年者の高血圧患者の降圧目標は130/85mmHg未満だが、家庭血圧では、125/80mmHg未満を目標と定めている。会社の健診などで血圧の数値が高いと指摘されたら、病院を受診するほか家庭用血圧計を利用するなどして、ぜひ高血圧と向き合ってみてほしい。(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)
心と体(日経ビジネス2009年4月6日号より)
(この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年3月13日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)
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