4月は習い事を始める子どもが多い時期です。小学校に入る前から、沢山の習い事をさせる親御さんたちは少なくありません。

 自分の叶えられなかった願望を子どもに投影させて習い事をさせたり学校を決めたりする人々を見るたびに、「子どもは大人のおもちゃでもない」と私は思うのですが、そんな人は問題外だとしても、子どもの将来を真剣に考えて沢山の教育を提供しようとする、教育パパ・ママは後を絶ちません。

 私は子育てをしたことはないものの、自身のNPO(特定非営利法人)を通じて子どもの養育の実状を見てきた経験を踏まえると、知能教育よりも「気質」を育てる養育のほうがはるかに重要なものであると考えていますので、本稿ではその点について考えてみたいと思います。なお、ここでいう気質とは、行動特性といったものとして考えて頂ければとおもいます。

教育パパ・ママが生まれた背景

 幼児期教育ブームの嚆矢となったのは、カーネギー財団によって1994年に出版されたレポート“Starting Points”であるといわれています。同書は、子どもの知性の発達のためには、生れてから3年が決定的な重要性を持つと主張しました。なぜなら、この時期の子どもの脳の発達は急速であり、外部の環境の影響を受けやすく、その影響は長続きするためです。

 このレポートは、我が子を思う大量の親御さんたちをこれまで以上に教育パパ・ママであることに駆り立てました。ジョン・スチュアート・ミルなどの、(実は一部の例外である)英才教育を受けた人の逸話もあり、人々の不安を煽ることによって、幼児期教育の巨大産業が生まれていきました。20年も経った現在では、習い事を幼児期にさせるのが当たり前のことであるかのように考えられていますが、一昔前であればそうでもなかったわけです。

 確かに、子どもの知能や運動神経などは子どもの頃に受けた養育環境によってある程度変わっていくことがあるそうです。この分野では論争が絶えませんが、一部の分野に関していえば(特にスポーツや芸術など)、子どもの頃にトレーニングを受けていなかったら超一流にはなれないという意見が多いようです。

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