○部下:「確かに」

●営業課長:「スーツ発祥の地、イギリスをはじめ西欧でも同じだ。洋服を着込むのはパワーがある証拠とみなされてきた。例としてどうかと思うが、マフィアが出てくる映画を見てみたまえ。ボスはスーツをビシッと着こなしている」

○部下:「下っ端はシャツ一枚ですね……」

●営業課長:「これを『ユニフォーム効果』という。大雑把に言えば、人は相手を見た目で判断する、ということ。スーツをきっちり着込んでいる人と、ラフな格好をしている人と、両方から同じ説明を受けた場合、きちんとした服装の人から聞いた方が説得の効果が高いそうだ」

○部下:「それはそうですね。言われて思い出しましたが、課長はいつも長袖シャツにジャケットを着ていますね」

●営業課長:「まあ、欧米に比べ、日本は湿度が高過ぎるから、猛暑にネクタイまで締めると汗まみれになって見た目が悪くなる。だからネクタイまで締めろとは言わないが、半袖シャツはやめた方がいい。トップセールスになりたいのだったら、だ」

半袖シャツと決別するなら今

 環境省は2012年に『環境省におけるクールビズの服装の可否』という文書を公開しました。それを見るとクールビズの服装の基本形は「ノーネクタイ」「半袖シャツ」のようです。「ノージャケット」「かりゆしシャツ」もよいそうですが徹底されていないと文書に書かれています。また、「ポロシャツ」「アロハシャツ」「Tシャツ」「ランニングシャツ」は不可となっています。

 この中で気になるのは半袖シャツの着用です。顧客を訪問し、商談をこなし、注文をとる営業は半袖シャツを避けるべきだと私は考えます。

 半袖シャツを着る理由は省エネルギー対策となっていますが、身も蓋もないことを言えば、着ていて楽だということでしょう。

 社内にこもり、何かをじっと考える仕事であれば、アロハでもTシャツでも楽な恰好をした方がリラックスでき、頭が回るかもしれません。

 しかし、自分の限界に挑戦し、それを超える喜びを味わおうとする営業は、一定の緊張感を維持したまま、顧客の前に姿を見せるべきです。

 そして、対話で紹介したように、きちんとした服装で訪れた方が説得力は増すものです。1970代半ばに出版された『Dress for Success』というベストセラー本に、半袖シャツの上司は部下から軽く見られる傾向があるという調査結果が出ているそうです。

 反論異論があるでしょう。「そもそも何を着ようが本人の自由だ」「服装にこだわるくらいなら、人間を磨け」といった意見も聞きます。

 全員が長袖シャツを着るべきだなどと言っているわけではありません。しかし、お客様に応対する営業、その中でもトップセールスを目指す人はユニフォーム効果を利用すべきだと思います。衣服と着こなしが相手に与える心理効果は不変ですから。

 半袖シャツと決別するなら、夏が来る前、今がその時です。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年6月9日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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