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 さて「ヒト」についてはどうでしょう。企業のバランスシートには載ってこない資産です。ファイナンスではどう見るのか。

 実は工場や設備、土地といったモノ以上にキャッシュを生むのがヒトという資産なのです。

 トヨタ自動車の工場は人の力なしで勝手に自動車を生産しているのではありません。カンバン方式などに代表される人が行うオペレーション上の工夫があってこそ、強いトヨタがあるわけです。次世代自動車の研究開発などもコンピューターが勝手にしているわけではありません。

 つまり、ヒトが一番キャッシュフローを生む力を有しており、ヒト、モノ、カネの順番はキャッシュフローを生む力の強さの順番なのです。

モダンタイムズやマルクスが示す真理

 チャップリンの映画『モダンタイムズ』をご覧になったことがあるでしょうか。資本主義社会や機械文明を痛烈に風刺した作品で、労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで表現しています。

 自動給食マシーンの実験台にされるシーンや、チャップリンが歯車に巻き込まれるシーン、ラストのチャップリンとヒロインが手をつないで道を歩いてゆくシーンなどが有名です。

 私はあの映画で彼が言いたかったのは、「機械だけではなく人が必要だ」ということではないかと考えています。カール・マルクスの労働価値説もその意味で今でも真理です。人の手がないと工場の機械はキャッシュフローを生めないのです。

 ではヒトの価値はどのようにして把握したらよいのでしょう。株式市場に聞けばよいのです。以下の図は企業価値(右)と財務会計上のバランスシートの資産(左)を比較したものです。

 企業価値は株式時価総額と負債を足し合わせたものなのですが、健全な企業であれば、バランスシートの資産よりも企業価値の方が大きくなります。

 その差を無形資産と呼び、目に見えない資産であるその企業で働くヒトや、ブランド力、情報などが含まれると言われています。

企業価値のフレームワーク

 負債のない無借金の会社であれば企業価値は株式時価総額そのものになりますから、株式時価総額と会計上の自己資本の差を比べれば、無形資産の価値が見えてきます。

 無形資産の大きさを測る指標にPBR(株価純資産倍率)があります。株価を一株当たりの純資産で割った値です。この値が高いほど無形資産が大きいと言えます。参考までに東証1部に上場している企業の中から、PBRを高い順に並べた表を示しておきます。

■東証PBRベスト10
ベスト10 証券コード 会社名 市場株価 一株当たりの純資産 PBR
1 3649 (株)ファインデックス 7,070 (単)252.81 (単)27.97
2 8918 (株)ランド 25 (連)1.37 (連)18.25
3 3064 (株)MonotaRO 2,440 (連)137.66 (連)17.72
4 2413 エムスリー(株) 2,072 (連)121.13 (連)17.11
5 2193 クックパッド(株) 4,400 (連)257.60 (連)17.08
6 2371 (株)カカクコム 1,614 (連)99.95 (連)16.15
7 2127 (株)日本M&Aセンター 3,835 (連)297.76 (連)12.88
8 3092 (株)スタートトゥデイ 2,463 (連)196.56 (連)12.53
9 3252 日本商業開発(株) 2,279 (連)194.53 (連)11.72
10 2931 (株)ユーグレナ 1,561 (連)133.79 (連)11.67