さて、株式を共有しているAさんの相続人3人は、どうやって代表者を決めることになるのでしょうか。これは、共有財産の管理に関する事項に当たりますから、共有持分権者の持分に応じた過半数で決めることになります。つまり、2分の1を超える持分の賛成によって代表者を決めることになるのです。また、代表者がどのようにして議決権を行使するか、つまり誰を取締役に選任することに賛成するかについても、2分の1を超える持分の賛成によって決めることになり、代表者はその決定に従わなければならないことになります。

 Aさんの会社の場合、Aさんの奥さんは2分の1、息子さん2人は4分の1ずつ持分を有しているわけですから、Aさんの奥さんの意見だけで決めることはできませんし、息子さん2人の意見だけで決めることもできません。

「うちの会社に限って…」は当てはまらない

 ここまで見てきたことから分かるように、会社を巡る手続は、想像以上に面倒なことが多いのです。また、このような会社の様々な手続を巡る争いごとは、大きな会社について起こることはまれであり、同族会社のような小さな会社で起こることの方が多いのです。

 東京地方裁判所には、このような会社関係の事件を専門に扱う商事部という部署があるのですが、そこにかかっている事件の大多数は、小規模な同族会社における紛争だと言われています。「うちの会社に限って…」というせりふは、ここでも当てはまらないのです。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年4月30日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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