会社の登記簿には平取締役の住所は記載されていませんから、登記簿を見ても連絡先すら分からないということになってしまいます。仮に連絡先が分かっていたとしても、取締役として名前を借りただけで、疎遠になってしまっている人に連絡を取り、協力してもらうことは現実には面倒なことです。場合によっては、協力的でない取締役もいるかもしれません。このような場合は、まず、取締役を選び直すことから始める必要があります。

取締役はどうやって選ぶの?

 新たに取締役を選任するためには、株式会社であれば、株主総会を開いて株主の多数決によって新たな取締役を決める必要があります。新たに取締役を選任することについて単に過半数の株主の同意を取り付ければよいというわけではありません。あくまでも株主総会を開いて決議する必要があるのです。

 さらに、株主総会を開くためには、まず会社の株式を保有している人をすべて特定する必要があります。オーナー会社であれば、社長が株式を100%持っていることが多いでしょう。しかし、2代目、3代目の社長の場合は、少なからぬ株式が親族に分散してしまっているケースも珍しくありません。

 また、会社設立の際に知人から資金援助を受けるに当たって、少数の株式を引き受けてもらっているような場合もあります。こういった株主の名前や連絡先は、会社の登記簿には出てきませんから、誰が株主になっているかを特定したり、これらの方々と連絡を取ったりすることは、かなり面倒になることがあります。

 仮に連絡が取れたとしても、協力的でない人がいる可能性もあります。幸いにして、すべての株主と連絡が取れ、Aさんの株式を相続したAさんの相続人を含む、すべての株主が一堂に会して新たな取締役を選任することができれば、これで問題は解決したことになります。いわゆる全員出席総会に当たるので、株主総会の招集手続を省略することができるわけです。

 しかし、連絡が取れない株主がいたり、手続に協力的でない株主がいたりした場合には、招集通知の送付など法の定める厳格な招集手続に則って、株主総会を開く必要があります。

どうやって株主総会を開くの?

 ここでまた問題が出てきます。会社を代表して株主総会の招集手続を行うのは代表取締役である社長です。しかし、Aさんの会社では、社長が不在なのですから、株主総会の招集手続を行うこともできません。そこで、このような場合には、株主総会の招集という代表取締役の職務を代行して行ってくれる人を裁判所に選任してもらう必要があります。これを職務代行者選任の仮処分と言います。

 裁判所は、株主の間に意見の対立がない場合には、Aさんの相続人の誰かを職務代行者に選任してくれるでしょうが、株主の間に意見の対立が生じる可能性がある場合には、全く無関係で中立公平な立場にある弁護士などの中から職務代行者を選任することになります。こういう場合、裁判所は、弁護士会から推薦してもらって人選するという取り扱いになっています。

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