全3156文字

 WHO(世界保健機関)の「世界保健統計2015」によると、平均寿命84歳の日本は世界一の長寿国。しかし男女別に見ると、女性は第1位なのに対し、男性は第6位で、意外なことにベスト5にも入っていない。

 現代の日本で本当に「アンチエイジング」が求められているのは、健康に対する意識の高い女性よりも無頓着な男性のほう。男こそアンチエイジングが必要なのだ!

 今回のテーマは「睡眠」。日本人は世界的に見ても睡眠時間が短いが、睡眠不足は決して侮れない。睡眠時間が短いと生活習慣病やうつ病のリスクが高くなり、寿命を縮めることが分かっている。特に6時間を切ると要注意だ。

 しっかり眠り、元気に毎日を過ごすためにはどうしたらいいのか? 具体的なテクニックを睡眠研究の第一人者に聞いた。

「眠り」は最高のアンチエイジング

 日本人は睡眠時間を削るのが大好きだ。「四当五落」や「惰眠をむさぼる」などという言葉もあり、寝る間も惜しんで働くことが美徳とされてきた。

 実際、日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い。2011年のOECD(経済協力開発機構)の報告では、加盟28カ国中、日本はノルウェーに続いて2番目に睡眠時間が短かった(表参照)。NHKの「国民生活時間調査」によると、とりわけ40~50代は短く、平均7時間を切っている。

 徹夜でがんばることには独特の高揚感がある。しかし後から振り返るとミスも多く、効率が悪いことは、誰もが経験上、分かっていると思う。

 睡眠不足だとうまく頭が回らないのは、決して気のせいではない。「睡眠時間が5時間を切る日が続くと、脳はチューハイを数杯飲んだときと同じくらい機能が低下する」と、睡眠研究の第一人者として知られる睡眠評価研究機構の白川修一郎代表は指摘する。

 それに留まらず、「睡眠不足は体を壊す」ことが疫学的にも確認されている。

 まず、免疫力が落ちる。5万6953人の女性を対象にした調査によると、睡眠時間が5時間以下の人は8時間前後の人たちに比べて1.39倍、肺炎になるリスクが高かった(Sleep. 2012 Jan 1;35(1):97-101)。

 人の身体は、運動や活動によって疲労したり、細胞にダメージを負ったりするが、睡眠中に成長ホルモンが出てそれらを修復するようにできている。睡眠不足だと、成長ホルモンの分泌が少なくなるため十分な修復が行われず、その結果、老化が進む。

 また、脂肪や糖の代謝が悪くなり、交感神経の緊張が続くため血圧も上がる。実際、睡眠時間が6時間以下の人は肥満、糖尿病、心臓病の有病率が高い(Sleep. 2013;36(10):1421-7)。さらに、「うつ病、事故、自殺のリスクも高くなる。睡眠時間が6時間を切るのはたいへん危険」と白川代表は注意する。

 4419人の日本人男性を調査した自治医科大学の研究から、睡眠時間が6時間以下の人は7~8時間の人に比べて死亡率が2.4倍高くなるという報告もある(J Epidemiol.2004 Jul;14(4):124-8)。

 睡眠不足は老化を進め、寿命を縮めるというわけだ。「よく眠る」ことは立派なアンチエイジングであり、サプリメントなんかよりも大きな効果が期待できるし、お金はかからない。どんなに忙しくても、なるべく睡眠時間は削らないようにして、6時間以上眠ることを心がけてほしい。