大人の論理思考の「盲点」は図形問題で分かる

算数で、図形の問題が得意な子と不得意な子がいますよね。あれも身体感覚が深くかかわっている気がします。

西村:実は、図形「だけは」得意な子というのは、図形の難問になると解けないんです。つまりパッと見て、1回の作業でこううまくいきそうだ、というのを楽しむわけですね。こうやってこうしてああなると3つぐらいロジックが重なるともうダメ。そこまで粘りがないんです。

 逆に図形が嫌いという子の中から、最終的に図形が本当に得意な子が出来上がりますね。文章題でも、少々難しい問題でもじっと我慢して考え続けることができる。そういう子の場合には、2つの方向から行くことを教えます。

 1つは、今分かっていることから次にすぐ分かることは何か。そしてもう1つは、聞かれている答えが分かるためには何が分かれば便利か。その両方から考えさせる。それがだんだん近づいて最終的につながれば解答に至るわけですね。これがうまくいくとすごく快感を得ますから、すぐにその方法は身につきます。

それは大人の場合も同じですね。何か解決すべきことがある場合、取りあえず今できることを探すのと、ゴールから戻ってきて何ができればいいのかを探すのと、方向性は2つありますね。

西村:ですから、正しい受験勉強をすれば大人になってからもものすごく有利になるんですよ。1つ1つ「ああなるほどね」という積み重ねができる人は、その感覚が大人になってからも使えますし、「なるほど」が起こるような方向を自ら見つけていくことができる。先ほどのフリーターの話で言えば、実際に行動に結びつく意欲がわき起こるために何が必要かというと、結局は一手先を予測できる力なんです。決して最終目標ではなくて。その一手先の予測も、はっきりした確信ではなく、こっちにいくとうまく行きそうかな、という勘のようなもの。それもまた身体感覚なんです。

そこがないと、いつまでたっても行動につながらなくて、「ああなったらいいな」とずっと思っているだけと。

西村:それから、会議の席などで、ものすごく論理的で筋道だった話をされる方がいますよね。論理的思考はとても重要だと思うんですが、得てして「それはうまくいかない」とか、否定的な意見ばかり理路整然と説得力満点で述べる方がいます。

 ところがそれでは社会生活は止まってしまいます。結局何が必要かというと、目標に向けた話ができなくてはならない。これは図形問題を解くのと全く一緒なんです。

 できない理由ばかり探す人というのは、今分かることから次に何が分かるか、そこから何が分かるかといった積み上げ思考しかできない人ですね。そうじゃなくて、「こうありたい」というゴールのところから、ではそのために何ができればいいかというふうに戻ってこれる思考も必要です。それには図形の問題を解けばよいわけですが。

目の前からの積み上げ思考のパターンだけで固まってしまってるわけですね。目標からこっちに戻ってくる思考パターンも必要。それには図形を解けばいいと言われても(笑)。確かに、解いておけばよかったんでしょうが。 ただ、それに気づくことは大事ですね。自分の思考パターンはいつもこうだな、と。

西村:身体感覚はあくまで基礎の基礎であって、そのうえで正しい勉強につなげることが重要です。やり方がちょっと違ってしまったために後で伸びなくなってしまうこともあります。

 例えばいろいろ解き方を教えて、これがこうなってこうなるから、分かったか? と尋ねると、先生それで答えは何なの、と聞いてくる子がいます。そういう子は中学に行くとほぼ落ちこぼれてしまうんですね。御三家の私立に合格したとしても、まず落ちこぼれてしまう。

それはなぜですか。中学受験までは器用さで何とかなってもその後は難しいということですか。

西村:結論が出てほっとすることだけを追い求めるか、考えていく途中途中での快感が味わえるか、の違いでしょうね。

 そういう意味では、正しい受験勉強をする限りは「燃え尽き症候群」なんて起こり得ないですし、その思考訓練は大人になってからも大きく役立ちます。目標を設定し、意欲を持って行動し、到達するというプロセスの連続が、社会を生き抜く力そのものにつながりますから。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年1月24日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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