振り返れば私は、真空管、半導体、液晶、太陽電池と、一貫して「エレクトロン(電子)」の世界に身を置いてきました。幸いにも、こうして数えで100歳まで生きてこられたわけですが、「知恩報恩」と言いましょうか、死ぬまでにこれまで生かしてくれた恩に報いたいと思っています。
電子の「還元」で地球を救う
それは、老化の原因である細胞の「酸化」を食い止める「還元」の技術を確立するための活動を支援することです。酸化という現象は、細胞の外に「電子」が出てしまうことで起こります。それなら、「電子」を再び細胞の中に入れることができれば、酸化の進行を止めることが理論上はできるはずです。

今、地球上では2万種以上の生物が「絶滅危惧種」に分類されているといいます。太陽系の惑星で唯一、生物がいる地球はこの先どうなるのか。そこで生きている人間はどうなるのか。私たちの子孫はどうなるのか。この大問題を解いていかなければなりません。
生命の寿命を延ばす可能性を秘める還元の技術は、その解の一つになるのではないでしょうか。その技術を使えば、人間は130歳、140歳まで寿命を延ばせるのではないかと思っています。
その実験台として、100歳の私を使っていただきたい。
生命が生き延びる「場」さえ維持できれば、そこで世の中を良くするイノベーションは必ず生まれます。かつて私がそれまで難しかったリンゴとマンゴーの接ぎ木に成功し、リンゴマンゴーという新種を生み出しのと同じように、多様性のある場があれば、そこで異質の才能がぶつかり合う「共創」によるイノベーションを起こすことができる。
私は残された時間を使って、「地球生命を考え、地球を救う会」を作ろうと思っています。そして、皆さんの奮起とその成果を期待しつつ、この世を去っていきたい。
(この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年1月8日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)
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