ジョブズさんと孫くんに「リンゴマンゴー」を説く

 この、リンゴマンゴーの話は、アップルの(スティーブ・)ジョブズさんにもしたことがあります。彼はまさにヒッピーみたいでしたね。そんな彼に、リンゴマンゴーの精神に基づいて、ライバルのビル・ゲイツさんとも絶対に会わないとあかんで言ったんですよ。

 孫(正義、ソフトバンク社長)くんにも、共創の大切さは伝えました。孫くんはある日、私に会いたいと言ってやって来たんです。カリフォルニア大学バークレー校在学中に開発した翻訳機を事業化することにのめり込んでいて、「翻訳機こそ俺の行く道だ」と熱狂していました。そして、試作機を持って僕のところにやってきたんです。

 孫くんは、翻訳機を持って松下(電器産業、現パナソニック)に行ったら門前払いをくらい、三洋(電機)に持っていったら、「お前らがやったってだめだよ、俺のところで作ってやろうか」と言われたと言って涙を流していました。悔しいと言って。それで最後に、シャープの私のところに持ってきたというわけ。 そこでシャープが約1億円でその技術を買い取ってあげた。 それを元手に孫くんは起業家として成功していくことになり、それ以来、私を大恩人だと呼んでくれるようになりました。

 孫くんは、あれはダメだ、これは当たるという勘を持っているんですね。何というか、才能ですわ。技術の本質を知っているんでしょう。孫さんだけではなく、最近はそういう人がぼつぼつ現れ出しているので、これで日本は救われるなって私は喜んでいるんです。

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