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松田:その通りです。同様に、上の方は加算されて「速くなった」だけ、としか見えません。翼の周りの空気の流れを示す動画は「YouTube」にいくらでも上がっています。すべて「上が速くて、下が遅い」ことを示しています。翼の下面で逆流しているなどという事はありません。

Y:上が速くて下が遅い、見えるのはそれだけ。循環があると言っても、見えなければ信用しにくい。でも実際に起こっていることを説明しようとすると、見えなくても「そこに循環がある」と仮定せざるを得ない。うーん…。

松田:ああ、可視化できない、自分の目で見えないと、存在を信じられませんか。

Y:そういわれると中世の人みたいで恥ずかしいんですが、その通りです。

松田:可視化についていえば、磁力線は目に見えませんね。でも、磁力の存在は疑いますか?

Y:うーん…それは話をすり替えておられませんか。

目に見えない「循環」を、どうすれば理解できるか

松田:磁力線は、鉄粉を使うと可視化できますね。紙の上に鉄粉が線を描くと「なるほど、そういうものか」と腑に落ちる。翼の循環にも、これに似たものがあります。翼端渦です。

Y:NASAのフィルムなんですね。大型機が通り過ぎた後に、主翼の両端から大きな大気の渦が生じていることが、煙突からの煙によって可視化できる。

松田:これが翼の生む渦の中でもっとも大きい「翼端渦」ですね。さて、こちらもご覧になると、いろいろな翼の生む大気の渦が見られます。

Y:おお、本当に翼はくるくると渦を引いて飛んでいるんですね。

松田:翼が渦を生みながら前進していくので、つらなった渦に見えるわけです。

 ちなみに、翼端渦を中心に空気中の水蒸気が凝結してできるのが、おなじみの飛行機雲です。渦の中心は気圧が低いので、断熱膨張が起こって温度が低下し、雲を作る。雨の日に着陸寸前の飛行機で、主翼のフラップの角などから、この種の飛行機雲が発生するのが見えます。

Y:えっ、そういうことだったんですか!?

松田:飛行機雲にはエンジンの燃焼ガス由来のものもあって、本当はそちらのほうが多いですけどね。

 さて、翼端渦について説明しましょう。

 翼が横方向に無限の長さを持っていれば(2次元モデルという)、空気の循環=渦は、左右に何処までも伸びる翼の周りをずっと回っているのでしょうが、現実には翼の長さは有限で、左右で切れますね。すると翼周りの循環を構成する渦は、両端からどこかに行かなければなりません。そうして出来るのが翼端渦です。この渦は翼端から出発して、ずっと後方に繋がっています。