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入山章栄・早稲田大学ビジネススクール准教授(写真=陶山勉)

 久しぶりの記事配信になりました。実は2012年12月から30回近く続けてきたこの連載「MBAが知らない 最先端の経営学」が、大幅な加筆・修正のうえ『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』として11月24日に日経BP社から刊行されることになり、その執筆・編集作業に追われていました。本書書下ろしのコンテンツも豊富にあり、日本では通常知り得ない「世界最先端のビジネス知」が盛りだくさんですので、ぜひ手に取っていただければと思います。

 さて、今回はその本でも書ききれなかった、私が米国から帰国して日本のビジネスパーソンと交流を深めていく中で気づいた、重要な視点を議論しましょう。それは、いわゆる「中期経営計画(中計)」についてです。

日本企業にはびこる「中計病」

 みなさんの企業でも、中計を立てられるところは多いはずです。最近なら、経営再建中のシャープの中計が話題になりました。しかし、「どうもこの中計にとらわれていることこそが、日本企業の問題の一つなのではないか」というのが、経営学からみた私の問題意識なのです。実際、企業の現場で実際に中計策定に携わっている方々の中には、中計を作るだけで疲弊しきってしまうところもあるようです。中計は、現場を疲弊させてまで作る意味があるのでしょうか。

 この視点を最初に提示したのは実は私ではなく、私が親しく交流させていただいている、デロイトトーマツコンサルティングのパートナーの日置圭介氏です。日置氏は、日本企業が中期経営計画策定に翻弄される様子を「中計病」とまで名付けています。私も日置氏と議論する中で問題意識を共有するようになりました。今回は経営学者の立場から、「中計病」の経営理論による解説を試みたいと思います。

 中計の最大の問題は、その期間設定です。日本の典型的な大企業の中期経営計画は、多くが「3年」計画となっています。3年という期間は、企業戦略をたてるという意味で、実に中途半端に短い期間です。サラリーマン社長の任期期間に合わせているのかもしれません。この3年という中途半端さこそが、日本企業の成長力を失わせる遠因になっているのではないか、というのが私の問題意識です。