香港の今日が、台湾の明日

 記者は3月、台湾・台北で立法院(国会に相当)を占拠する学生らを取材していた。

 彼らは、台湾が中国と事実上のFTAである「中台サービス協定」を締結することに反発していた。その彼らが見ていた「未来」は、今の香港だった。CEPAによって経済が一体化されて「中国の一部」になることで、資本家や企業が商機を得る代償としてアイデンティティーを喪失した香港の姿。「ああはなりたくない」と彼らは考えた。

 台湾はアジアでも有数の民主的政治システムを実現している地域の1つだ。だから彼らは「民主化」という「政治」問題ではなく、サービス協定締結反対という「経済」問題で戦った。二者は「協定締結反対」と「民主化」というまるで異なる要求を掲げているが、表層上の相違点を捨象していけば、その原動力は同根だった。

 さらに「中国」という国の特殊性や歴史的経緯をも捨象してみたらどうだろう。畢竟、香港と台湾のデモとは「超大国と一体化していくことに対する恐れ」の表れであり「巨大経済圏と一体化していくことの副作用の痛み」の表れでもあった。

 巨大化する中国が、香港と台湾をどう扱うか。21世紀前半の東アジアの地政学にとって最も大きな問題の1つだろう。地政学が激動させる原動力は、もはや自由主義/社会主義というイデオロギーによる対立ではなく、巨大な経済圏の中で絡み合う利害の中からいかに経済的利益を最大化するかという闘争に移りつつある。2014年に両地で相次いで発生した占拠デモは、その闘争が引き起こす荒波に翻弄され、戸惑う人たちの悲壮な抵抗でもあった。

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