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:学者は専門家として、食品添加物について科学的に説明し、こうした誤解を正してほしい。

:もちろんそういう学者がいないわけではないが、アカデミアからの声は小さい。声が大きいのは、健康食品企業や市民運動団体などの顧問となり、科学的ではないのに一見科学的に思えるような発言をする学者だ。自然や天然を売り物にする一部の健康食品企業のために、「保存料は科学的には安全性が確認されていない」と言ったりする。それを聞いた消費者は、「科学者である専門家が言うのだから、保存料が危ないのは間違いない」と信じてしまうというわけだ。しかもこういった学者はあたかも消費者の味方のように取り扱われるので、知名度は上がり収入も上がる。そこには残念ながら一定の経済メカニズムがある。

1人ひとりにもっと科学的に考えてほしい

:こうした誤解への連鎖を断ち切るためには、どうすべきか。

:国民1人ひとりが、「○○が危ない!」ということに対し、「何で?」「科学的根拠はあるのか」と冷静に、素直に考え、正しい情報収集をする努力をすることだ。

 食の問題が起こるとたいてい消費者は、食品安全行政の無策ぶりを追求するが、ただ批判するばかりで自ら正しい情報収集する姿勢に欠けているように思う。科学的なことは専門家でないから分からないと言っていては、不利益を被っていることすら気がつかない。多少読みにくいが、食品リスクについての科学的評価を行う食品安全委員会のホームページなど、信頼できる情報源は必ずある。それらを複数以上探して、自ら勉強していくことだ。

:最後に、食のリスクを理解するポイントを1つ挙げるとすれば、何か。

:「リスクは量であること」を理解してほしい。例えば、あれだけ騒がれたBSE(牛海綿状脳症)のリスクよりも、喫煙のリスクのほうが400万倍も大きい。現在起こっている放射性セシウムが牛肉から検出されている問題でも同じことが言えるのだが、汚染されているか否か、黒か白か、あるいはゼロか百かという2分法で考えてはいけないということだ。

 放射線は医療現場で検査や治療に使われ我々の健康維持に貢献しているし、温泉地に行ったり、飛行機に乗ったりすれば、普段よりも多くあびることになる。普通に食べている野菜からも、そして何より我々人間の体からも放射線が出ている。量によって薬にもなれば、毒にもなるということだ。検出されたから危ないではなく、許容できる量かどうか、常に考える癖をつけておきたい。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2011年8月17日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)