筆者なりにこの言葉の意味を説明すると、次のように表現できます。「企業経営の主体が、不祥事の防止や収益力の増大を主な目的として、意思の決定と経営の執行を指揮すること」となります。ざっくりと要約すれば「企業経営をコントロールすること」という意味になるでしょうか。

 コーポレートガバナンスという言葉が登場した背景には「従来は、経営者が企業をうまくコントロールできなかった」という反省が存在します。

 この言葉は1960年代の米国で誕生しました。ベトナム戦争向けの武器を製造する企業への批判、雇用において黒人を差別する企業への批判が高まり、「企業を倫理的にコントロール」する必要性が生じました。その後、決算を粉飾する企業も批判の対象となり「投資家の立場から企業をコントロール」する必要性も生じました。このような経緯で、不祥事の防止と収益力の拡大という2つの目的を達成する手段として「コーポレートガバナンス」が必要になりました。

 では「企業経営をコントロールする」には、どうすればよいのでしょうか。例えば米国型の企業経営においては、経営に関する意思決定を「取締役会」が行います。この取締役会は「株主の代表」という性格を持ちます。そして取締役会の意思決定に基づいて、最高経営責任者(CEO)を代表とする役員グループが業務執行に責任を持ちます。つまり米国の一般的企業は「株主が取締役会を通じて意思決定をコントロールし、決定した方針に基づいて役員が経営を執行する」という仕組みになっています。

 これに対して、かつての日本では、実質的に銀行(メインバンク)が企業をコントロールしていました。グループ企業による株の持ち合いが進んでいたため、株主によるチェック機能が効いていなかったのです。この問題がバブル崩壊によって顕在化(銀行が企業に対して行った過剰な融資が不良債権となった)。コーポレートガバナンスの重要性が認識されるに至ります。

 「コントロールの主体が誰なのか?」という問題は、よく議論になります。「企業は誰のものか?」という議論です。古典的には「会社は経営者のもの」でした。しかしながら米国型企業経営では「会社は株主のもの」となります。さらに近年発達した「企業の社会的責任」(CSR)という考え方に基づけば「企業は、株主・消費者・経営者・従業員・取引先・地域社会などの幅広い利害関係者(ステークホルダー)の共有物」ととらえることができます。もちろんこの問いに対しては、現在でも様々な見解が存在します。

誰が、何のために、何をどうやって?

 ではコーポレートガバナンスの意味を、もう一度復習してみましょう。以後の説明を分かりやすくするため、「誰が(who)」「何のために(why)」「何を、どうやって(what, how)」という要素に分けて説明してみます。

 まずコーポレートガバナンスでは「誰が」ガバナンスを行うのでしょうか。その答は「企業経営の主体」となります。この主体は、米国型企業であれば「株主」、CSRに基づく考え方では「多様な利害関係者」となります。

 次にコーポレートガバナンスは「何のために」ガバナンスを行うのでしょうか。その答えは、歴史的経緯から「不祥事の防止と収益力の増大のため」とされることが多いようです。

 ではコーポレートガバナンスでは「何を、どうやって」ガバナンスを実現するのでしょうか。その答は「意思の決定と経営の執行について、コントロールすること」だと言えます。

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