ロイド:もう1つ重要な出来事があります。同時期(16世紀半ば~17世紀)、地球が太陽の周りを回っていることが発見されました。地球が宇宙の中心だと真面目に信じられていた時代です。それをきっかけに、聖書に書いてあることが間違いだらけだと分かってしまい、科学理論の探求に人々が精を出すきっかけにもなりました。このようにあらゆる意味で、16世紀ごろというのは現在に至る世界の歴史にとって、大変重要なポイントでしょうね。
ブログでは、「英国と日本の歴史を重ね合わせて理解したら面白い」と書かれていましたね。英国と日本はよく似ているから、日本を通して英国を学ぶのは有益だ、と。
ロイド:そうです。外の歴史から自分の国を知る必要があるのです。これがまた大きな問題です。英国の教育大臣は、英国人に英国の歴史だけを学ばせることにしか興味がない。
どこの国でも、都合の悪いことを教えないケースはあるわけですね。
日本と英国がとてもよく似ている理由
ロイド:しかし、これは大変危険です。右翼的で、保守的で、古臭い考え方です。例えば、英国は既に多文化社会なのです。海外からも大勢の人が移住してきて暮らしている。我々が理解しなければいけないのは、英国を今ある姿にしてきた、数多くの「外圧」についてです。自分自身を理解するだけではだめなのです。
たとえば火薬と鐙(あぶみ)は中国からやってきました。鐙は乗馬を大変力強いものにしました。日本に初めて来た時、英国の歴史と比べたら、ものすごく共通点が多いことに気づいたんです。しかも、共通する部分は全くの偶然の一致です。互いに関係があるわけではない。
そこで考えました。我々は両方とも島国ですが、近隣諸国のことがあまり好きではない(笑)。それに、同じような封建制度を経験してきた。英国では騎士道、日本では武士道と言っていますが。
なるほど、確かに似ていますね。それは島国という環境があってそう「進化」したのかもということですか?
ロイド:騎士道と武士道、とても似た考え方です。しかも、別々にそう進化している。生物学みたいなものです。歴史と生物学を見比べてみてください。生物学では、こうもりと鳥がそれぞれ飛ぶことを覚えましたが、こうもりと鳥は互いに関係ないでしょう。接点はない。環境がそうさせただけです。英国と日本も、ひょっとしたら似たような環境だったから社会がそう進化をしたのかもしれない。こういう考え方をしてみるのも、科学と歴史をつなげて考えてみる、ということなのですよ。
(この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年7月29日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)
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