ロイド:そして、小規模な学校で、年齢の違う子供と交わるのです。同じ年の子供だけに囲まれて過ごすなんて、不自然ですよ。300万年の間、アウストラロピテクスから現代まで、人類の歴史の99%で、同じ年の子だけに囲まれて子供が育ったことなんてない。普通は大人や兄弟姉妹、年齢の違う友達に囲まれて成長しました。同年齢の子だけと過ごしていたら、息が詰まってしまいますよ。
つまり、多様な人に囲まれた環境ではないということですね。
ロイド:そうです。そして、年齢を混ぜるだけでなくて、科目も混ぜて一緒に学んだ方がいい。その新しいやり方を、大人が模索していかなければなりません。学校では「創造的に考える」方法を学ぶべきです。歴史を知っていても科学を知らない。科学を知っていても歴史に疎い。問題の種は、歴史と科学のつながりの欠如に植え付けられているように思います。歴史か、科学か、地理か、生物学か、算数か、という感じで分かれてしまっている。それを全部つなげることで初めて見えてくることがある。
例えば、今世界で一番大事な気候変動の問題も、科目を横断的に考えることで初めて本質が見えてくる。科学と人間の歴史にかかわる重要なテーマです。もちろん気候は自然にも変動しますが、人間由来で変動している部分もある。それを両方合わせて考えられなければ、気候変動について理解して取り組むことができない。エネルギー政策についても同じです。これは科学の問題ではなく、ライフスタイルの問題なのですから。
例えば原発問題は、核を使うか、使わないか、の問題ではないのです。どのように生活し、どのぐらいのエネルギーを使いたいか、もしかしたら少なく使う楽しみもあるかもしれない、と考えてみることなのです。文明に関する話であって、科学ではない。これをジャンルを横断する対話の中で創造的につなげて考えていかなければいけないですね。
創造性の欠如は、過剰なテストステロンのせい?
日本でも創造性の欠如が問題視され、「自分で考える力」の育成ということに焦点があてられています。さらなる経済成長にはイノベーションが必要ですが、我々の教育システム、および年功序列型の組織では、新しいものをつくるうえでマイナスなのではないかという問題意識もあるようです。
ロイド:その通りでしょう。しかし、システムをいきなり変えるのは難しいですね。それこそトップのビジョンが重要です。問題を認識し、それから何に着手するかを決めなければ。しかし、日本ではトップのリーダーシップとビジョンに欠けている、という声をたくさん聴きます。
ここで問題なのが、人間社会にテストステロンが蔓延していることなのです。
テストステロン?!……。つまりは男性ホルモンですね……。
ロイド:そうです。考え方に多様性が欠如している、という話をしました。それはエストロゲンとテストステロンのバランスが悪いからです。教育でこのバランスを取っていくための創造性が、教育現場に必要なことです。そもそも多様性の欠如は、家父長制の構造に由来します。
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