ロイド:ならば小休止して、子供が小さいうちにともに時間を過ごすことは、とても有益だと思ったのです。大事なのは、休み休みでも働き続けて、現役引退を少しでも遅くすることですからね。そういう生き方の方が、経済にとってもいいことでしょう? 

 仕事を辞めて、最初にしたことは、キャンピングカーを買って、欧州を旅することでした。これは、家族全員にとって大きな学びとなりましたね。旅の途中で、科学と歴史を結びつけて教えられる本をあちこちで探し回ったのです。でも、そんな本はなかった。どうしてもっと、自然科学の歴史と人類の歴史を一緒に語りながら、誰でも理解できるような本がないのかと。世界で一番重要なのは、「この地球で一体、何が起こってきたのか?」なのです。出来事の羅列ではなくて、今、我々が生きている世界の長い歴史です。

 そこで、自分で本を書くことにしました。娘に教えつつ、出版するための本を。半年の旅が終わって家に戻ったら、執筆に着手しました。とても貴重な経験でした。幸いにして、多くの方に読まれ、好評を博しました。一度は無職になった私も、英国を中心に各国のあちこちの学校を訪れたり、講演したりする多忙な生活になりました。会社もつくりました。今年の後半はスペインに行きますよ。

文字では分厚すぎるからイラストの年表に

 しかし、書いた後で、子供たち自身はこんな分厚い本はなかなか読めないという点が気になりました。時間がかかりすぎます。そこで、物語を伝える別の方法が必要だと悟りました。それは、図や絵にすることです。そこで本に書いた内容をもっととっつきやすくするために、「WALL BOOK」、つまり壁に飾れる本にしたのです。16枚の紙を取り出してさっそく1億年の歴史をカバーするビジュアル年表のラフを描き、セロテープで留めて、『137億年~』でもイラストを描いてくれた友人に頼みました。

確かに、イラストが豊富で見やすい。子供が喜びそうです。

ロイド:歴史は互いにつながっています。この年表だと、各国の歴史が横断的に眺められる。各国バラバラに見える歴史が、互いに影響し合っていることを、視覚で学ぶのです。文字から学ぶことは必ずしもベストではありません。劇の方がいい場合もあるし、絵とか漫画の方がいい場合もあるのは、実感としてもあるでしょう?

 在宅教育は1年のつもりでしたが、結局5年に及びました。あまりに楽しかったからです。下の子も家で教育しました。

在宅で教育を数年にわたり全うできるというのは、英国ならではのようにも思えます。

ロイド:ドイツや日本は、子供の教育は国の責任なのですよね。でも、子供の教育者が親であるというのは、自然で健全なことです。娘は11歳の時、妹と一緒に学校に戻りました。小規模な学校でしたので、うまく溶け込めました。一般的には、大規模校より小規模校の方がいいと思います。子供が多すぎると、大量生産の工場みたいになってしまう。それはよくない。

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