ロイド:しかし娘は学校がつまらない、退屈だと言ってきかない。何にも興味が持てないと。7歳の子供が、世の中つまらない、人生退屈、なんて感じるとは、大変なことですよ。転校しようとあちこち学校を探しましたが、どこも似たりよったりでした。そこで、自分で教育しようと決めたのです。
幸いに英国では、1870年にできた教育に関する古い法制度がまだ生きていて、子供の教育は両親でも大丈夫だということになっています。制度はそもそも、当時の貴族階級が庶民の子と自分の子を学校で交わらせたくない、自宅で家庭教師をつけたい、というおつにすました動機でできたものでしたが、今でも英国では10万人もの子供が自宅で学んでいます。熱心な親の教育方針だったり、子供に特別なサポートが必要だったりと、事情は様々ですけれどもね。
最初は1年だけ休学させるつもりだったんですよ。そして、学校のカリキュラムに沿って、学校の時間割通りに過ごしてみた。3カ月経っても娘が興味を見せる様子はない。そこで、改めて娘に聞いてみたんです。「何が面白いと思う」って。そうしたら、「ペンギン」と答えた。
ペンギン?
ロイド:そうなんです。そこで、私と妻は娘に言いました。「よし。じゃあ、ロンドンの動物園にペンギンを見に行こう。それから、ペンギンが住んでいる場所について一緒に勉強しよう」。娘は、ペンギンが南極に住んでいることを知りました。そこから、ペンギンが暖を取るために集団生活をしていることを発見します。そこで私は「この大きなグループのペンギンにこの小さなペンギンが加わったら、全部で何羽になるかな?」と自然に算数の勉強に持っていきました。娘の目はキラキラしていました。それから、我々は南極の氷について学びました。氷は水が固まってできます、水は蒸気が液体になったものです。すべて同じ物質です。そう、理科の勉強ですね。
そして、今度は氷山について話をしながら、氷山にぶつかって沈んだ豪華客船「タイタニック号」の話に持っていったりしました。ペンギンにまつわる詩や歌について学んだこともありました。試行錯誤する中で、私たちは、子供が興味を持ったものを使えば、学校のカリキュラムに盛り込まれていることなどすべて教えられることに気づいたのです。娘はまるで旅をしているかのような感じで、冒険と発見に満ちた学習をとても楽しんでいました。
どうせ一生働くなら、小休止したっていい
それにしても家でずっと勉強を教えるとなると大変ですね。お仕事はどうしたんですか。
ロイド:私は教育系出版社に勤めていましたが、退社して子供の教育に全力を注ぐことに決めました。働いている場合ではないと。それにもし、65歳で引退して後は働かなくていい、という人生だったらそれを考え直したかもしれませんが、我々の世代はこのままいけば、たぶん75歳になっても働かねばならないでしょう。
Powered by リゾーム?