本社は積極的な投資家に徹する

今回の組織改革では本社の機能も大きく変えるようですね。

 従来の日本企業ではほとんどの本社が事業部制で組み上がったピラミッドの頂点という存在でしょう。事業を執行する事業部があり、それを束ねる戦略的な本社がある。今回はピラミッドという概念は全く持っていません。再編したカンパニー、SCEなどの事業ユニットが上下なく平等に並び、それらを並列に見ている本社の取締役会があるという構図にしていきます。

 そして、その取締役と本社とは事業ユニットを評価するアクティブ・インベスター(積極的な投資家)という役割を担います。本社の社員はアクティブ・インベスターになるために頭を切り替えなくてはならない。

事業ユニットの評価にも新しい手法を使いますね。

 資本コストを正しく反映した新しい業績評価の尺度を導入します。EVA(経済的付加価値)に近いものですが、ソニー流に工夫します。

 これまで期間損益重視で運営してきたけれども、では果たして利益さえ上げていれば、資本コストがいくらかかってもいいのか、という問題意識があったのです。例えば、携帯型MD(ミニディスク)プレーヤー、携帯型ビデオムービーなどを担当していたパーソナルAVカンパニーは業績好調で3年連続で社内表彰を取っているけれど、よくよく見ると、売上高研究開発費比率は4.9%ぐらいと少ない。つまり本社がかなりの研究開発費用を負担しているわけです。

 今までのカンパニー制はこのように、経営資源の使い方などのルールがあいまいでした。100メートル競走をやっているところがあるかと思えば、マラソンをやっているところもあるという具合でめちゃくちゃだった。それを整理し直したということです。

今回、エレクトロニクス事業を主軸に据えると明確に表明し、10あったカンパニーをSCEを含めた4カンパニーにくくり直しました。これはどういう狙いですか。

 将来のソニーを担う経営者を育てようという思いがあります。これから先、極めて有能な“スーパー最高経営責任者(CEO)”や“スーパー最高業務責任者(COO)”がいなくても運営できる仕組みを作りたかった。

 ソニーにはハードからエンターテインメントまでさまざまな事業が混在していて、それぞれビジネスモデルが違います。今回くくった4カンパニーはビジネスモデル別にして、経営するうえで混乱がないようにしました。

 例えば、テレビ、オーディオ機器などを担当するホームネットワークカンパニーはソニーの伝統的な組み立て産業で、いわば収穫逓減のビジネスモデルです。これからは量を追うより、事業をうまく管理しながら利益を上げていくべき事業です。一方、パソコン、携帯電話などを担当するパーソナルITネットワークカンパニーは収穫逓増のビジネスモデルに乗るもので、今はどんどん量を拡大していくことが必要です。こうしたビジネスモデルごとに経営者を育てていこうというイメージです。

 それから、4つのカンパニーの下にはたくさんの小さなカンパニーを作ります。売上高で2000億円規模のカンパニーを任せるとなったら、相当ヒトを選ばないといけませんが、300億円ぐらいなら何とかなりますよね。そういう経験を踏ませることでヒトを育てようとしています。

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