ソニーグループは6月7日、社長や会長兼グループ最高経営責任者(CEO)などを務めた出井伸之氏が2日に死去したと発表しました。84歳でした。追悼の意を込めて、日経ビジネスが1999年3月に掲載した出井氏(当時はソニー社長)のインタビューを再掲します。謹んでご冥福をお祈りします。

(日経ビジネス電子版編集部)

主力のエレクトロニクス事業強化を狙った大胆な組織改革を断行。上場子会社3社を100%子会社化、10のカンパニーを4つに再編した。本社機能は、各事業を評価し支援する「積極的な投資家」と定めた。社長に就任して4年、理想とする企業作りの第1段階が終わったと話す。

(聞き手は1999年当時の日経ビジネス編集長、小林 収)

(写真:清水盟貴)
(写真:清水盟貴)

ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)など上場子会社3社を一気に100%子会社にした今回の組織改革は驚きました。

 私は社長になる前から、子会社が独自に上場していることに疑問を抱いていました。日本では子会社の上場は“出世”、すごろくの“あがり”のような印象があるけれど、それはおかしい。上場とは会社の資産を売り渡すことで、米国では「sell to public(公に売り渡す)」と表現するんです。今回、上場3社を100%子会社にしたのは「これはソニーの資産である」ことを公に発表した格好です。

日本には成長事業は本体から切り離した方がいいという考えもありますね。成長分野だけを外に切り出せば、利益成長も高いからPER(株価収益率)もぐんと上がります。

 小分けした方が株主の利益が上がる、企業価値が上がるというのは、その会社の仕組み自体がおかしいんじゃないのかなあ。企業にはコア(中核)の事業がある一方で、その周辺でもいろいろな事業を手がけている。こうした事業をどのように組み立てて企業を構成するかというコーポレート・アーキテクチャー(企業組織のあり方)がきちんとしていれば、外に出さなくても企業価値は高まっていくはずです。

ただ、子会社にして自由にやらせたからこそ成長したという例が結構あります。親会社に対する反骨心や怨念がバネになる、といったことも実際問題として見逃せません。

 そういう側面がないとはいいません。しかし、反骨心だとか怨念といったプリミティブ(原始的)な次元で経営するような人なら、自分でベンチャー企業を起こしたらいいんだよね。つまり、大企業の経営者になり切れていないんじゃないかなと思う。

今回の子会社吸収はいつごろから計画を練っていたのですか。

 子会社をソニーの中に取り込むというのは、僕の基本理念でしたから、話を持ち出したのはもう2年以上前のことです。それ以来、なぜ上場しているのかという議論を取締役会で重ねました。その間、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は上場したいという意向をもらしていたけれど、あえてさせなかった。

 去年の10月には、経営会議のメンバーが2日間缶詰めになって、ソニーにとって何がコア事業なのかを議論したうえで、子会社吸収を含めた基本的な合意に達しました。51%の株式を持っているアイワを吸収対象からはずしたように、子会社なら何でも吸収するというわけではありません。

ほかの取締役から反発はありませんでしたか。

 いいえ。大賀(典雄会長)さんにも100%賛成してもらいました。「これで安心した。俺も前からそう思ってた」と。社長が決めて、会長が100%支援するという強い意志がないと、今回のように大きな改革はできません。大賀さんの立場から見れば、大賀―出井コンビで経営をしているうちは少し異質な改革だってできるけれど、2人ともいなくなったら、どうやってソニーを舵取りしていくのかという心配がある。だから僕はその仕組みを作ったわけです。

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