金利が高ければ将来キャッシュフローの現在価値が減少するため、金利が上昇すると債券価格は下落する(図のAからBへの変化)。逆に、金利が低下すると債券価格は上昇する(図のAからCへの変化)。景気が悪化して金利が低下すると考える投資家は、債券を購入すればよい。実際に金利が低下して債券価格が上昇すれば、期待通り利益を獲得することができる。逆に、金利が上昇すると期待すれば、あらかじめ債券を売却することで債券価格の下落による損失を回避することができる。

長期債は短期債よりもリスクが大きい

 債券の年限によって、金利の変化に伴う価格変化は異なる。債券の金利が0.1%変動した場合の債券価格の変化額を弾性値という。

2年債0.1% 0.20円
5年債0.1% 0.49円
10年債0.1% 0.89円
20年債0.1% 1.13円
40年債0.1% 2.16円

 一般的に長期債ほど価格変動リスクが大きいとされるのは、変化額の幅に違いがあるためである。金利が低いほど、一定の金利変化における価格変動幅が大きくなることも実務上は重要である。実際に金融機関や機関投資家はこうした債券のリスク特性を念頭に置いて国債を運用している。

利回りの計算には単利と複利がある

 債券投資の収益は、利息収入、償還・売却差損益(キャピタルゲイン)、再投資収入の3つに分解できる。償還・売却差損益は取得時の価格と償還時または売却時の価格の差である。また、利付債に投資した場合、一定期間ごとに利息を受け取る。いったん受け取った利息を再び投資することで収益を確保することを再投資収入という。

債券収益の分類

収益の種類 概要
利息収入(インカムゲイン) 投資期間中の利息受け取りによる収入
償還・売却差損益
(キャピタルゲイン)
投資金額(購入価格)と回収金額(元本償還や売却価格)との差額
再投資収入 期中の利息収入を他の金融商品へ再投資することから得られる収入

 債券収益として3つの要素のいずれを考えるかによって利回り計算式は異なる。日本の債券市場の売買実務では、計算が簡単なため単利利回りで取引が行われている。運用評価のためには、再投資収益を考慮した複利利回りを使うことが多い。債券価格が100円から大きく離れると、単利利回りと複利利回りの違いは大きくなる。今の金利が発行時点の金利から大きく乖離する場合には、複利利回りの方が投資尺度として重要になる。

債券利回りの分類

利回りの種類 認識される収益
直利利回り 利息収入のみを収益とみなすときの利回り
単利利回り 利息収入と償還・売却差損益を収益とみなすときの利回り
複利利回り 利息収入+償還差益+再投資収入を収益とした場合の利回り
(再投資レートを複利利回りと同率と仮定)

金利が投資家に与える影響

 今回は債券について考える基礎として、金利と価格の関係を振り返った。2010年現在、日本の国債で最も多く売買されている10年国債(発行から償還までの期間が10年)の利回りは、7年ぶりに1%を割って0.9%に近い水準にある。2010年度初の4月には1.4%程度であったから0.5%程度の大きな金利低下が生じた。その結果、国債を保有する投資家は大幅な価格上昇を享受していることになる。

 いっぽう、その間の日経平均株価は大きく下落した。投資家は株価下落による損失を回避するため、株式を売却して債券に投資する行動を取る。リーマンショックのように市場が大混乱に陥ると、債券は消去法的に投資対象として選ばれやすいためだ。債券価格が上昇すれば、金利はさらに低下する。

 国債を大量に保有する金融機関は、国債金利の動向を展望しながら国債を市場で売買している。国債の金利変化すなわち価格変動は、今や、金融機関の収益状況を大きく左右するほどの影響がある。同時に、国債を中心とした長期金利の変化に伴って、住宅ローン金利や社債金利も変動する。金利の動向は経済の各方面に様々な影響を与える。このことを改めて認識する必要がある。

 (この記事は日経ビジネスオンラインに、2010年10月19日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)

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