日本にいる100種類以上の蚊のうち、デングを媒介するのはヒトスジシマカ。北海道と青森を除く日本中に生息する、あの白黒の「ヤブカ」と呼んでいる蚊です。
「酔いにまかせて夜更けの公園で女の子を口説いていたら、彼女の足も自分の腕も蚊に刺されまくった」
そんな経験があり、都内の公園でデング熱感染者が出たというニュースを聞いて、内心ヒヤッとした人もいるのではないでしょうか。
「デング熱の処方箋・その1」でもお伝えした通り、蚊が引き寄せられるのは、体温・汗・呼気の3つ。体温もテンションも高く、息も荒いとくれば、夜の公園でカップルが蚊の格好のターゲットになるのは仕方のないことですが、そんな時にもうひとつ知っておきたいのは、蚊によって異なる性質です。
夜の暗がりなら安全?
蚊には大きく「イエカ」と「ヤブカ」の2種類があります。
夜、耳元にブーンと来てヒトの血を吸うのは、夜に活動性の高い「イエカ」の仲間。
ヒトスジシマカなど「ヤブカ」の類は、昼間から夕方の日中に活動性が高く、昨年、代々木公園で最初のデング熱患者となった学生さんがデングウイルスを持つ蚊に刺されたのも日中の出来事でした。
――「ヤブカ」は原則、夜にヒトを刺すことはない。
ならば、私も「公園に行くならカップルはできるだけ暗いところでやって」とアドバイスしたいところです。
しかし、専門家の中には「電灯の下など明るいところではヤブカも刺す」という人や「生き物だから断定はできない」という人もおり、殺虫剤の開発等とは直接関係の無い蚊の生態については、驚くほど分かっていないことが多いらしいのです。
結局、夜更けの公園であなたを刺したのは、デング熱とは関係のないイエカ?
それとも、灯りに引き寄せられて現れ、昼間と勘違いして刺したヒトスジシマカ?
その答えは簡単に出そうにありません。
現時点で注目すべきは、デングの蚊ではなく、「デングのヒト」の方です。
日本では今年もデングに感染した蚊は1匹も見つかっていませんが、ヒトの方は今年だけですでに、174例(8月30日現在)もの輸入感染例が確認されています。
――デング熱は人から人へとはうつらない
インフルエンザやエボラ出血熱などとは違って、「ある人がデングのヒトと濃厚接触したところで感染しない」というのは事実なのですが、デング熱に罹っているヒトをヒトスジシマカが刺し、同じ蚊がさらに別のヒトを刺せば、その人がデング熱に罹る可能性はあります。
そのため、専門家の中には「一人出てくればネズミ算式に広がる」「デング熱はいつ流行してもおかしくない」と言う人もいましたが、今年は、ネズミ算どころか、国内でデング熱に罹った人は一人もいません。
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