写真:Natsuki Sakai/アフロ
写真:Natsuki Sakai/アフロ

→デング熱の処方箋・その2

 今年(2015年)の代々木公園には「蚊がいない」と評判です。

 昨年は70年ぶりとなるデング感染者を国内で初めて出し、一時期は立ち入り禁止となった代々木公園。殺虫剤が撒かれた後も、しばらくは人が寄り付かなくなっていたあの代々木公園が、です。

 事実関係を確認するために、本当に蚊が減っているのかを調べてみました。

 東京都では2001年から「感染症媒介蚊サーベイランス」を実施しています。以来、毎年6月から10月までの期間、公園や霊園・植物園など蚊が生息する都内16施設で、蚊を捕まえては、その数を調べたり病原体の有無を調べたりしてきました。

 さらに、今年からは、代々木公園、日比谷公園、上野恩賜公園など、都内にある9つの大型公園をサーベイランス施設として追加。全部で25カ所の蚊についてモニタリングしています。

 まずは従来の16施設における昨年までと今年の蚊の数。

 去年と今年ではほとんど数が変わらず、各観測地点での蚊の補足数は数十から数百匹。何もしなくても、時期がくると一桁オーダーで蚊の数が変わるのが興味深いですね。
感染症媒介蚊サーベイランスの結果

 一方、こちらが代々木公園を含む新たな9施設の蚊の数。ほぼすべての観測地点と観測時点で、その数は「ゼロもしくは一桁」で推移しています。
デング熱・チクングニア熱媒介蚊サーベイランスの結果

 どうやら、「今年の代々木公園に蚊がいない」のは事実。
 しかも、日によっては“ディズニーランド並み”のようです。

 まさか、代々木公園は本当にディズニーランドを見習ったのでしょうか。(「デング熱の処方箋・その2」)

 東京都ペストコントロール協会会長の玉田昭男氏によれば、
 「それは昨年の9〜10月に薬剤を散布し、越冬する蚊を駆除したから」。

 蚊の発生を防ぐには、成虫が卵を産む秋口の蚊を駆除して、翌年の蚊の発生を防ぐことが非常に有効です。新たなサーベイランス地点に加えられた9つの大型公園は、いずれも「昨年、秋に薬剤を散布した場所」。発生してから駆除するのもいいですが、前年の殺虫剤に勝るものはありません。

 しかし、都としては、デング熱など病気を持った蚊が見つかった場合のみ、薬剤を散布するというスタンス。今のところ、蚊が多い従来の16施設での薬剤散布の予定もありません。

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