ビジネスシーンで時々、ローファーを履いている人を見かけます。

 ローファーとは、足の甲の部分にU字型のパーツが縫い付けられ、その上に飾り帯状の革が付いた紐なしタイプの靴。「ローファー」は英語では“loafer”。怠け者という意味です。
 靴紐をいちいち結ぶ必要がなく、簡単に履いたり脱いだりできるのが、名称の由来と考えられています。

 このローファーは、正式なビジネスシーンで履くのは実は不向きです。ローファーは カジュアルシューズに分類されるため、基本的にビジネスシーンで履く靴ではないとされています。

紐なしでするりと履けるローファー。見た目も落ち着いているので、一見問題ないと思いきや、正式なルールでは避けたほうが無難(撮影:古立 康三、ほかも同じ)

 スーツスタイルで足元だけがカジュアルなローファーだと、見た目もちぐはぐになる。過去、中高生時代には、学生服にローファーを履いたという人も多いでしょう。ビジネスシーンでもローファーを履く人は、もしかすると、その頃の習慣を引きずっているのかもしれません。ただ、それは大人のビジネスルールではNGです。

 ローファーのように、紐もベルトも付いていない靴のことを、総称して「スリッポン」と言います。英語で表記すると“slip on”。その名の通り、まるでスリッパのように足を滑らしてサッと履けるのが特徴です。

 このスリッポンをスーツ着用時に愛用する人も多いようです。けれどローファー以外のスリッポンもやめたほうが無難です。理由は、ローファーと同じように、相手にカジュアルな印象を与えかねないから。

 スリッポンは着脱が楽なので、履く人にとっては便利でしょう。

 けれど繰り返しますが、ビジネスシーンで大切にすべきなのは、職場や取引先で会う相手です。
 「楽をすること」と「相手の印象を良くすること」は、反比例の関係になりやすい。楽をすればするほど、くだけた雰囲気になって、相手に違和感を与えかねませんからね。

 正式なビジネスシーンでは楽をしようと思わないこと。少し厳しい言い方かもしれませんが、相手本位で考える心持ちが大切でしょう。

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