丸山:そんな考えの下、新しいアプローチで肩凝り治療をする目的を掲げ2012年に設立したのがこの研究所です。ここでは「胸」「背中」「腰」「股関節周り」「太もも」の筋肉の、緩めるべき部分を緩め、強めるべき部分を強めることで、肩の筋肉が固まらない体を作っていきます。

実際に肩凝りが治るのですか。

丸山:週一回、2~3カ月通院して頂き、生活習慣の改善など当方のアドバイスを実践してもらえれば、たとえ60歳以上の方でも現状よりは確実に快方に向かいます。30~40代で来院して頂ければ、「メンテナンスにより生涯肩凝りに悩まされない体質になることすら可能」と考え、治療に取り組んでおります。

なるほど。では、そんな肩凝り治療のプロにお聞きします。肩凝りに悩まされている人の多くがついやってしまう首をポキポキ鳴らす行為。あれは肩凝り解消に役立っているんでしょうか。私自身、一瞬、肩や首が楽になったと感じる時もありますが。

首ポキで「一瞬、肩や首が楽になった」は気のせい

丸山:それは完全な錯覚です。首の関節を鳴らすことを私は「首ポキ」と呼んでいますが、百害あって一利なしの行為です。首ポキは我々の想像以上に首に衝撃を与えていて、頻度によっては、生死に関わる重大な病気の遠因となる可能性すらあります。

えええ。生死に関わるとは、首の骨が折れたり、首の血管が千切れたりする可能性があるということですか。

丸山:“普通の首ポキ”でそこまでの衝撃はかかりません。

なら、なんで首を鳴らすだけで死ぬ可能性が…。

丸山:順を追って説明しましょう。まず、今話している首ポキですが、肩凝り同様、なぜあのような音がするのか正確な原因は分かっていません。ただし有力な仮説はあります。首に限らず関節は骨と骨が関節包という袋のようなものに覆われていて、そこには関節腔という隙間があります。関節腔は普段は滑液という一種の潤滑油で満たされています。ここで、普段は動かさない範囲まで関節を動かすと関節腔の容積が増し、陰圧が発生します。そして陰圧が発生すると滑液に溶けていた窒素や二酸化などの気泡が発生するんです。

なるほど。ちょっと難しいですが、とにかく関節を大きく動かすと、関節周りに気泡が出来るわけですね。

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